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サイモントン療法のサイモントン博士の論文を日本語に訳しました。ご本人の了解を頂き公開しています。無断転載・2次利用などは固くお断りいたします。

学会発表論文
癌とストレス
癌患者のカウンセリング(この内容は第六回オーストラリア内科学会で発表された。)
O・カール・サイモントン  ステファニー・マッシューズ・サイモントン
 
オーストラリア内科学雑誌 1981,1:679-683.
 
癌の原因としては、一般に受け入れられている発ガン性の化学物質や、発ガン性ウイルス、遺伝的な因子、放射線照射、慢性の外傷に加え、数多くの心理的な因子もまた重要である。これらの心理的な因子の中にはうつ病や、はけ口の無い感情、両親への親近感が無いと感じることなどがある。今後、標準的な医学的な治療に加えて、これらの因子の効果を明確にすることが必要である。進行癌の患者を対象にした予備研究が進行中であり、適切な医学的な治療に加えてカウンセリングが行われている。標準的なメンタルヘルスのカウンセリング課程がグループカウンセリングと組み合わせて行われた。1974年から1978年までの間に総数193人の進行癌の患者が医学的な治療に加えてカウンセリングを受けた。この中でも多かったのは乳癌(71人)、大腸癌(28人)、肺癌(24人)であった。これは米国で頻度の高い癌でもある。この研究での生存期間の中央値は乳癌で38.5ヶ月、大腸癌で22.5ヶ月、肺癌で14.5ヶ月であった。この生存期間は、文献的に報告されている生存期間の中央値から予測される値よりかなり長いものである。こう言った手法を用いた我々の第一の関心は、カウンセリングが個々人の生存率の向上、充実した人生と安らかな死の達成に役立ちこそすれ、足を引っ張るものではないということにある。予備的な結果、カウンセリングがカウンセラーと患者、医療チームと家族の間の人間関係により、治療の役に立ったり、足を引っ張ったりすることがあることがわかった。これは予備的な研究であり、解決すべき問題は多々残されている。
 
歴史的な概観
過去十年の間にスタンフォード大学のソロモンと、ワシントン大学のリリーをはじめとする幾人かの研究者が心の持ちようがどうやって癌の成長を促したり、退縮させたりするかを明らかにする研究をしてきた。
 ソロモンは視床下部背側を取り去ると抗体産生能が衰え、結果的に宿主の体内に抗原が蓄積することを示した。この処置を受けた実験動物は移植された腫瘍が生着しやすくなるし、癌も自然発生しやすくなり、癌は速やかに進行して死にいたる。
 視床下部背側の弱い電気刺激により、免疫反応が強化され、移植された腫瘍は生着しにくくなり、癌の自然発生率も減少する。腫瘍が生着したとしても対照群の動物よりその成長の速さは遅かったのである。
 リリーは1978年の8月にC3Hマウスで実験を行った。正常であれば、その80%が乳癌を発生する週齢において、マウスに加えるストレスを調節することで癌の発生頻度を低ストレス群の7%から、高ストレス群の90%までかえることが出来ると報告した。慢性的なストレスはステロイドホルモンの産生を高めることがこれまでにわかっており、リリーはマウスの腫瘍ウイルスの腫瘍発現性はステロイド濃度が高まると増大することを培養細胞系において証明した。ステロイド濃度が高いと乳癌や、肺癌の予後が悪くなる事が発見された。慢性的なストレスはステロイド産生を高め、免疫系を阻害して癌を含めた病への抵抗能力を下げるのである。
 こう言った事柄の研究は、重症のうつ状態に引き続いて悪性疾患が発見される事があり、また、うつ状態があると癌が再発しやすいという現象の機序を説明する助けになっている。こう言った現象は過去の有名な医師たちにより観察されており、その最初のものは西暦200年のギリシャの医師ガレンによる記録である。彼はうつ病の婦人の方が乳癌にかかりやすいと記載している。現代の研究者ではル・シャン、グリーン、シュマール、バーンソン、その他が同様の報告をしている。
 ブルンベルグ、ウエスト、エリスとクロッパーの共同研究では心理学的な因子と腫瘍の成長の速さとの関係を幅広く行ってきた。彼らはこの主題について論文をいくつか発表しているが、その中での古典的なものはキャンサー・リサーチ誌の1952年の12巻に載ったものであり、「人間における腫瘍の増大速度と心理学的な因子の関係」と題したものである。
 ハンス・セリエはストレスの生理学と病態生理学のパイオニアであるが、癌とストレスの関係について1000以上もの事例を収集している。
 ジョンスホプキンス大学のC.B.トーマスによる未来展望的な研究で、悪性疾患を発病しやすい病前性格の存在を1976年に報告し、ル・シャンとバーンソンの悪性疾患の発病には生活歴のパターンが大切であるとした過去回顧的な研究を裏付けている。シュマールとアイカーは1971年に未来展望的研究で子宮頚癌と希望を見失った感情を関連付ける研究を発表している。1978年には同様な未来展望的な研究がスペンス、スカボローとギンスバーグによりなされ、感情的な因子と子宮頚癌の間に相関を見出している。これらの関係の基礎医学的な側面の研究が重要である。パッチゲールは1977年に怒りを抑圧する習慣がある患者のIgAの値が低いことを報告した。こう言った発見は乳癌患者においても同様に認められた。ロックは1978年にストレスとキラー細胞活性の間の相関を報告し、この分野における研究での混乱のいくつかの理由を明らかにしたが、それらは将来実験の計画を決める時、考慮しなければならないものである。ニューサウスウエールズ大学のバートロップは1977年ランセット誌に近親者との死別の際にT細胞機能が減弱すると報告した。
 ストレスと癌の関係にかかわる複雑なメカニズムを解明するには同様な研究がもっともっと必要であろう。
 
哲学的な立場
 癌の発生とその臨床経過に関して重要であると報告された心理学的な問題は、メンタルヘルスの専門家の誰にとっても重要な問題である。感情の問題についてどうアプローチするかは様々な標準的な方法がある。これらの問題を効果的に提示することで悪性疾患の臨床経過がかわるように見える。たとえ、臨床経過がかわわらないとしても、患者のメンタルヘルスは好転するであろう。
 この分野では、警告も必要である。癌と診断された患者は傷つきやすく、患者自身の個性とプライバシーと病に対処するために、患者がもともと持っている力-たとえば否認など-を守るために格別の注意をはらう必要がある。カウンセラーが良かれと思って進めた話が速すぎて、患者の同意が付いていけなかったような場合には、惨めな状況となり、その結果、病に好ましくない影響を及ぼし、そのことは着実に患者の生の質と死の質を低下させる。良いカウンセリングは複雑多岐にわたり、その内容をこの論文に記載するには適さない。
 
患者と方法
四年間、癌患者に様々なカウンセリングを試した経験から、予備的な研究が1974年、テキサス州のフォートワースの癌カウンセリングと研究センターで進行悪性腫瘍の患者についてはじめられた。この研究に参加した患者は245人であった。患者は適切な医学的治療を受けることと、癌の臨床経過、生の質、死の質に影響を与えるように積極的にカウンセリングに参加することを同意した。適切なフォローアップが出来た患者以外は除外され、1974年から1978年まで治療を受けた患者のみが研究対象とされたので患者数は193人に減少した。患者のうち67%が女性で33%が男性であった。平均年齢は47.6歳であった。この論文では数の多い三つの癌について触れる。つまり、71人は乳癌、24人は肺癌、28人は大腸癌である。
 カウンセリングを受ける患者たちは伴侶ないし、大切な人に付き添われた。カウンセリングが始まる前に患者たちは一連の心理テストを受けた。つまり、MMPI、Firo-B、社会歴、性歴、Locus of Control、文章完成テストである。カウンセリングは個人的なものとグループセッションとからなり十日間に亘り行われた。この中には最初の聞き取り、内科診察、一日六時間からなる七日間のグループカウンセリング、個々人の最終カウンセリングが含まれた。それ以降、患者は電話や手紙によるフォローアップや、五日間のフォローアップセッションに参加することが出来た。患者は集中カウンセリングの前と後で自分の居住地域の治療者にカウンセリングを定期的に受ける事が求められた。セッションあたりの平均参加患者数は7人であった。
 いくつかの標準的なカウンセリングの手法は人生の初期の決断をやり直すこと、標準的な自己肯定訓練を使って感情のはけ口を作ること、目標を設定すること、再発と死に関する思いを評価すること、ストレスを特定すること、病気になったことで得られたものを特定することであった。我々が採用した中でも中心的なことはリラクゼーションとイメージングで一日三回、一回10分から15分行うものであった。これは病を感じにくくさせ、恐怖を減じ、怒りを開放するのにきわめて有用であり、その他の心理学的な手法と組み合わせて採用された。この手法は患者が自分自身の健康を積極的に維持増進する方法を見つけるのに大いに役に立つ。イメージを絵にすることは患者が自分の癌について、治療について、治る可能性について信じることを評価するために日常的に行われている。
 希望の無いことをはっきりと口にする患者に対して最近開発された手法が採用されたが、この手法は大変役に立ちそうに見える。
 治療食に関する教育は、かなり工夫された肉体の訓練と同様に日常的に行われている。
 
結果
表1は癌のカウンセリングと研究センター(以下当センター)での進行乳癌の生存期間の中央値(MST)である。全てを含んだ進行乳癌患者の生存期間の中央値は38.5ヶ月であった。最近の文献を調べた結果では米国での進行乳癌の生存期間の平均的な中央値は18ヶ月で10~27ヶ月に分布した。
 表2は当センターでの進行大腸癌の生存期間の中央値を示す。全てを含んだ進行大腸癌の生存率の中央値は22.5ヶ月であった。これは文献的な米国の平均的な値の9ヶ月で6~11ヶ月に分布するものと比較される。
 表3は当センターでの進行肺癌の生存期間の中央値である。全てを含む進行肺癌の中央値は14.5ヶ月であった。これに比べて、文献的な米国の平均的な値は6ヶ月であり、4~9ヶ月に分布した。
 
 
 
考察
 ここにとり上げた患者の生存期間は文献に報告された症例より長くなっている。文献に報告された患者の生存期間も米国の標準よりは長い。可能性としてはどのような説明がこのことに対して出来るのであろうか?明らかな説明の一つはより良い治療と患者が選ばれたものであることであろう。
 その他の説明としては期待感とプラシーボ効果がその中核をなす。癌センターのスタッフも癌センターに行く患者も癌センターでない施設よりも良い治療が受けられると信じている。このタイプの期待感は癌の臨床経過に影響を及ぼすと報告されている。
 我々は感情的な問題を表明するということがこれらの患者の生存期間を延ばす役割を果たしていると信じている。付け加えて、我々は感情的な問題を表明することは生の質を高め、死の質も高めていると信じている。(これについては後続の論文で論じるつもりである)
 大いに可能性が高いのはこれらの説明と、まだ知られていない要因の組み合わさったものがこの違いを引き起こしているということであろう。心理学的なことを評価する際の実験を計画する際の問題点は広範でまだよくわかっていない。科学的な証明の疑問は複雑であるので、アインシュタインは科学的な証明の本質を論じて確かめる大きな学会で、科学的な証明という主題は大変複雑であるので自分がどれだけ貢献できるかはなはだ自信がないと発言したことがある。
 経験をふまえた臨床家として我々はみな良心的な「カウンセラー」が、患者が病により良く「立ち向かえる」ように助けようとした結果、患者の状態が全体としてめちゃめちゃになってしまった例を経験している。我々はこのタイプの治療の失敗は患者の利益にならないと信じる。我々の結論はこう言ったことは三分野のすべてにおいて、すなわち生存期間においても、生の質においても、死の質においても利益にならないということである。十年間のこの分野の研究の後、我々はこの手法を物にしたと納得して喜んでいる。我々はこれらの結果が、心臓外科医が開心術を行うような結果をそのまま内科医が得られるほどには一般的なものだとは考えていない。まだこの分野では学ぶべきことがたくさん残されている。個々人の心はそれぞれ全く特別な分野である。我々独自の最新のカウンセリング分野はスピリチュアルな信念の分野に属し、希望を見失っていることに特に力を入れている。病める人々のカウンセリングを行うには死の周辺の問題とスピリチュアルな問題を抜きにすることは出来ない。これは極めて微妙な問題であり忍耐と繊細な感覚が大いに必要とされる。個々人の特質を鋭敏に把握し、すでに患者が置かれている、どうし様もならないような状況に対処していくために彼ら自身が持っている力を出せるように患者の権利を尊重することが、このようなカウンセリングに際して必要なのであり、病により打ちひしがれている患者に、病への対処の仕方を変えさせようとするものではない。
 
以下に引用文献が続く(略)
 
ナチュラルクリニック21 医学博士 中島鉄夫 訳
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