治療の現場から

       

アトピーとお酒の関係 久保Dr.からのアドバイス

2022.11.26治療の現場から

「アトピー改善には食事の管理が欠かせない」というのは、当院のアトピー治療の中心的な考え方のひとつですが、成人アトピー患者さんが症状改善を目指すなら、お酒を控えることも大切になります。

古くから百薬の長と呼ばれてきましたが、現代では身体の健康面だけで考えると、デメリットがメリットを大きく上回ると考えられているお酒。

ここでは、お酒が及ぼすアトピーへの悪影響をピックアップして解説します。年末年始を控え、食事会やお酒の席が増える季節。皆さんの参考になれば幸いです。
※ページの最後には、同じく嗜好品のタバコについての解説ページもご案内しています。

筆者のプロフィール

院長

ナチュラルクリニック21院長 久保 賢介
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。

詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介

その1 掻く動作が強まる

アルコールを摂取すると、麻酔作用によって掻いても痛みを感じにくくなるため、掻く動作が強まって掻き傷が悪化することがあります。

体を掻く男性

その2 血行が良くなってかゆみや皮脂分泌が増す

熱いお風呂に入って温まりすぎると痒みが増すというアトピー患者さんがいますが、アルコールには血管を拡張して血流をアップさせる作用があり、これによってかゆみや皮脂分泌が増すことがあります。

 

その3 体内の水分が不足する

お酒を飲むとトイレが近くなるものですが、これはアルコールの利尿作用に加えて、尿量を制御して身体の浸透圧をコントロールする「バソプレシン」という抗利尿ホルモンの生成が阻害されるためです。

アルコールを摂取すると、体は水分を強制的に排出して脱水状態に近づいていくことになりますから、肌の乾燥も生じやすくなります。

乾燥肌

 

その4 体内のビタミンが消費される

肌の健康にビタミンが重要だということはよく知られていますが、アルコールの代謝にはビタミンB1やビタミンCなどが必要です。

これらがアルコールの代謝で消費されてしまうと、体内ではビタミン不足が生じ、乾燥肌や肌荒れとなってアトピーの悪化を招きます。

 

その5 食欲が増す

冒頭にも書いた通り、アトピーの改善には食事のコントロールが重要であるということを、診察室でもこのサイトでも再三お伝えしています。

お酒の食欲増進作用で食べ過ぎてしまうと、皮脂の分泌が増して、皮脂を大好物としているマラセチアという菌が皮膚の上で増殖し、皮膚炎が悪化します。

サラダのイラスト

その6 酵母・カビとの関係

先ほども解説したアトピーの原因菌のひとつであるマラセチアや、同じくアトピーの原因菌のカンジダは、ざっくりと言えばカビの仲間です。そして、お酒造りで活躍する麹菌(日本酒)や酵母(ビール・ワイン)も、同じくカビの一種だと言えます。

当院では、酵母から作られたサプリメントを摂取したアトピー患者さんの症状が悪化することを多数経験しており、お酒から麹菌や酵母を摂取することも避けるべきだと考えています。

さらに、特にビール・日本酒・ワインといった醸造酒は糖質を含むため、カロリーオーバーにも特に要注意です。

それでもお酒を飲むなら

ここまで、お酒によるアトピーへの悪影響を説明してきましたが、お酒には気分転換やストレスの解消、対人コミュニケーションの活発化などといった心理面の健康増進につながる働きもありますし、付き合いで断り切れない場面もあると思います。

そのようなとき、特にアトピー患者さんは、醸造酒ではなくカビの成分を含まない蒸留酒を少量、おつまみを控え気味にして楽しむと良いでしょう。

アトピーとタバコの関係 久保Dr.からのアドバイス

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