治療の現場から

       

アトピー 脱ステロイド療法の限界とバイオ入浴の可能性:久保Dr.からのアドバイス

2022.04.27治療の現場から

アトピー性皮膚炎の脱ステ リバウンド療法について

アトピー性皮膚炎の患者さんがステロイドやプロトピックなどの免疫を抑制する薬を途中でやめてしまうと、今まで抑えられていた免疫が逆に活性化してきて、アトピー性皮膚炎が急激に悪化する現象が生じます。

一般的には「脱ステロイドのリバウンド」と呼ばれているこの反応は、奏功すると、その後アトピー性皮膚炎が一時的に非常に改善することがあります。これは免疫能力が高まって皮膚の微生物感染を抑制したためです。

別疾患での脱ステリバウンド療法

昔、慢性B型肝炎の治療方法に、ステロイドのリバウンド療法というものがありました。

多量に投与していたステロイドを急激に中断すると免疫が急上昇することを利用したもので、非常に上手くいくと、上昇した免疫がウイルスを除去して肝炎が治ってしまうことがあったのです。

しかし、この療法は危険を伴うもので、免疫が強すぎると、急上昇した免疫が肝炎を余計に悪化させて劇症肝炎を引き起こし、亡くなる方もいたために行われなくなりました。

アトピーの脱ステリバウンド療法

ステロイドを使わない治療(非ステロイド治療)を希望する沢山のアトピー患者さんを治療してきた私ですが、患者さんが自己流で脱ステすることはお勧めしていません。

アトピー性皮膚炎の脱ステロイドでもリバウンド後に劇的な改善が起こることは多くなく、ほとんどの場合は 2~3ヶ月間かそれ以上にわたって重症のアトピー性皮膚炎が生じます。

このアトピー悪化は、上記の劇症肝炎のケースと同じメカニズムによって生じるわけですが、自己流の脱ステを行う患者さんは、いつ脱するともわからない皮膚炎への不安やストレスを抱えながら悪化期間を過ごすこととなります。

また、脱ステ後の悪化期間をなんとか耐え忍んだ後も、皮膚症状の改善は、どうにか日常生活が送れる程度でストップしてしまうことがほとんどです。

つまり、アトピーの脱ステリバウンド療法は、ステロイド療法から離れることは出来たとしても、根源的な免疫異常は残存したままとなるため、アトピー性皮膚炎そのものを良好にコントロールすることは難しいということなのです。

【要約】私がアトピー患者さんに自己流での脱ステをお勧めしない理由
①脱ステ後のリバウンド症状でアトピーが非常に悪化し、日常生活に支障をきたす可能性が高い
②悪化した症状がいつ落ち着くか分からず、その期間中の精神的・肉体的負担が計り知れない
③リバウンドがおさまってもアトピー体質は変わらず、もともとの皮膚炎が継続する可能性が高い

自己流脱ステの注意点やリバウンドについてまとめた記事はこちら

自己流脱ステで悪化 寝たきりだった青年も症状改善で気持ちにも変化 症例:63

悪寒で震えながら入院した重症性アトピー患者 1ヶ月で劇的改善 入院期間:2019年6月~8月:症例46

 

当院は免疫変換を研究しています。

私は、バイオ入浴の免疫変換作用に注目して研究を続けています。

バイオ入浴では、開始当初から1ヶ月程度の期間、免疫バランスがTh2獲得免疫からTh1自然免疫へと変化する過程で、微熱が生じたりリンパ節が腫れたりという反応が生じますが、その後も継続する事によって、有効バクテリアによる免疫刺激がTh1タイプの自然免疫を誘導し続け、安定した免疫を維持するように作用します。

バイオ入浴で利用するbacillus(バチルス)タイプのグラム陽性芽胞菌群は、人類を含めた哺乳類の免疫を維持するためになくてはならない友人として太古から存在し、互いに共進化しながら免疫システムを作ってきました。
4億年以上の長い進化の歴史の上にこの関係が築かれてきたのです。

バイオ入浴はいっけん新しいもの見えますが、実は生物の古い免疫進化の土台に乗って免疫の方向性を導いているのです。

 

院長 久保 賢介 のプロフィール

院長

1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。

詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介

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