治療の現場から

       

入院患者さんによくある症状 脂漏性湿疹とは?:久保Dr.からのアドバイス

2022.05.24治療の現場から

当院を受診・入院するアトピー患者さんに、アトピーと併発して見られる症状として「脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)」があります。※脂漏性皮膚炎と呼ぶ場合もあります。

脂漏性湿疹は、頭部や顔など皮脂が出やすい部位に生じることが多い皮膚炎で、皮膚の常在菌(ふつうに存在している菌)であるマラセチアという酵母様真菌(カビの一種)の異常増殖や、マラセチアが皮脂を分解して産生される遊離脂肪酸による皮膚への刺激が原因だと考えられています。

マラセチアスタンプ

脂漏性湿疹は、かゆみはそれほど強くありませんが、ウロコのように皮膚がはがれ落ちたり(落屑)、皮脂を含んだ滲出液(しんしゅつえき)が固まって黄色いかさぶたのようになったりするのが特徴で、重症の場合は顔面の広い範囲が黄色いかさぶたに覆われているケースもあります。

ステロイド外用のみを塗布すると余計に悪化してしまうため、悪化を恐れて放置している方もいます。

皮膚の皮脂分泌腺が多い部分(耳の後ろ 眼の周囲や頬 額の生え際 後頭部)に生じやすいのが特徴で、目の周囲が固まって開きにくくなっていたり、衣類や寝具が汚れてしまったりすることも多く、苦労している方が沢山いらっしゃいます。

脂漏性湿疹が特に生じやすいのは乳児期で、多くの場合は成長するに従って改善しますが、学童期以降の脂漏性湿疹はいったん改善したとしても再発する可能性が高い疾患です。

当院では、「アトピー性皮膚炎は、健康な免疫が上手く形成されなかった患者の皮膚に生じる感染症である」という考えにもとづいて治療を行っていますが、マラセチアはまさにこの原因菌のひとつ。

マラセチアは、同じくアトピー性皮膚炎の原因菌である黄色ブドウ球菌などと同様にヒトの皮膚の常在菌ですが、自然免疫が弱く免疫バランスがアレルギーに偏っているアトピー患者さんの場合には、食生活の乱れなどをきっかけに増殖して皮膚炎を悪化させ、脂漏性湿疹やマラセチア毛嚢炎(毛包炎・※文末に解説します)を引き起こすのです。

そのため、脂漏性湿疹の治療や予防は、マラセチアを異常増殖させないように皮膚環境や免疫を整えることと、皮脂分泌が過剰にならない食事・生活習慣を実践することが何よりも重要です。

サラダのイラスト

過剰な皮脂分泌を避ける食生活というと、高脂肪な食品を避けることだと思われがちですが、そもそも摂取カロリーが過多であれば皮脂分泌につながりますので、カロリーコントロールが必須です。

食事についての情報は、このサイト以外にInstagramでも発信していますのでご覧ください。

キッチンインスタバナー

また、ストレスや過労、睡眠不足も皮膚炎の悪化要因となりますので、併せて注意が必要です。

当院が考える脂漏性湿疹改善へのアプローチ
・皮膚のマラセチアに対する免疫力を高める
・食生活を改善し摂取カロリーと脂質の質に注意する
・飲酒の習慣があればやめるか大幅に減らす
・睡眠不足にならないように注意する
・心理的ストレスと向き合う・原因と距離をおく
・病原菌(マラセチア)の抑制と自然免疫の強化(バイオ入浴)

こうやって書き出すと、脂漏性湿疹を伴うアトピーの治療にも入院治療が適していることがよくわかりますが、軽症者は食事を含めた生活の見直しで症状が改善する可能性も充分にあります。

生活改善をしても軽快しないという重症者は、バイオ入浴や当院への入院を検討なさるのも良いと思います。

※マラセチア毛嚢炎とは?
マラセチア毛嚢炎(もうのうえん)又は毛包炎(もうほうえん)とも呼ばれるこの皮膚炎は、赤みのあるプツプツと盛り上がった発疹が特徴です。
毛穴の奥の毛根を包んでいる部分(毛嚢・毛包)にマラセチアが異常繁殖して炎症を起こしているのが、マラセチア毛嚢炎です。脂漏性湿疹と同様、カロリー過多や油脂の多い食生活が原因で生じることが多い皮膚炎です。
マラセチア毛包炎

 

院長 久保 賢介 のプロフィール

院長

1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。

詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介

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