治療の現場から

       

2人のお子さんを預けて入院治療 入院期間:2016年3月~2016年6月:症例27 

2016.06.06治療の現場から

30代 女性

入院までの経緯

乳幼児期は耳切れ湿疹程度であったが、小学校高学年でプールの塩素によって皮膚炎が生じたのをきっかけに、ひじやひざ、顔にアトピー性皮膚炎が生じるようになり、高校卒業時までステロイド外用を使用していた。

大学1年生の頃、民間の入浴療法で脱ステロイドを試みたが、全身性に悪化。

微熱を伴う全身性の炎症が生じたため大学病院に入院し、ステロイド療法を再開した。

退院後もステロイド外用を11年間使用していたが、当院入院の2年前から効果が低下し、ミディアムタイプからベリーストロングタイプに増強されたが抑制できなくなってきた。

先行きに不安を感じたため脱ステロイドを行い、漢方→電気治療→吸引治療→温泉の素を使用した入浴治療を行った。

温泉入浴は効果があり1年間はステロイドを使用せず普通の生活ができていたが、入院の5ヶ月前に市販サプリメントを内服してから悪化。

再度温泉入浴を試みたが、今度は逆に悪化して全身性のアトピー性皮膚炎と悪寒が生じるようになった。

3才と5才のお子さんを持つママであったが、お婆ちゃんにお子さんの面倒を見てもらって、当院にて2ヶ月半の入院治療を行った。

検査データの見方はこちらのページをご覧ください。

入院後の経過

当院入院後は、非ステロイド治療と並行してバイオ入浴も実施。

重症度の指標であるTh2タイプの炎症マーカーTARCは、入院時の29061から3132、676(退院時)と一気に低下(改善)し、自覚症状を表すスコアPOEMも21→15→4と、非常に順調な改善を示しています。

衛生仮説※が言うように、アトピー性皮膚炎の患者さんは免疫能力が不完全で、黄色ブドウ球菌やマラセチア等の病原微生物をうまく除去できないため、患者さんの皮膚は病原性菌でいっぱいです。
特に黄色ブドウ球菌は強い毒素を産生し、アトピー性皮膚炎を増悪させるスーパー抗原として働きます。

バイオ入浴は、非病原性バクテリアの力で病原性菌を抑制し、Th2というアレルギー性免疫が優位になっている免疫バランスを是正します。

アメリカのアトピー性皮膚炎治療ガイドラインで紹介されている塩素剤入浴(ハイター入浴)による病原性菌抑制療法の有効性は、その後の追試で効果や安全性がほぼ否定されています。

この患者さんのように、塩素の刺激によってアトピー性皮膚炎が増悪するケースは、日常茶飯事でありナンセンスです。

温泉療法は効果が出る症例も散見されますが、機序の研究がなされず療法としては残念な状態と言わざるを得ません。

浴水内の有効細菌が病原菌を抑制し、TARCに代表されるTh2優位のアトピー性皮膚炎を改善させるというバイオ入浴を、機序の詳細を含めて論文上で社会に提示していくことの必要を強く感じています。

※衛生仮説とは・・・
「衛生過ぎる生活環境により、大切な免疫形成時期である乳児期に多様な微生物による免疫形成ができず、アレルギー体質を作ったというアトピーの原因学説」詳しくは下記をご参照ください。
アトピー発症の原因(前編)
アトピー発症の原因(後編)

 

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