治療の現場から

       

高校進学を控えて入院治療に取り組んだ女子中学生 症例:77

2023.03.25治療の現場から

10代 女性 2021年 60日間入院

重症のアトピーに耐えながら学業や部活動を頑張ってきた女子中学生が、高校進学を控えて、入院して集中的に治療に取り組んだ症例です。

ふくらはぎ#77

耳#77

腕内側#77

腕外側#77

足首#77

膝#77

 

入院までの経緯

乳児期より発疹があり、生後半年で卵白アレルギーと診断。
以降、アトピーの症状が生じているときにはステロイドやヒルロイドを塗布し、落ち着いたら中止を繰り返していた。

中学1年春に転居のため生活環境が一変した。
屋外での部活や日焼け止めの使用で冬頃から肌が異常に荒れ、ステロイド外用を常用するようになったが、効果は徐々に減弱。
中学2年の夏に脱ステしたが、全身がまっ赤になり滲出液が生じるようになった。

その後、鍼灸院で食事療法などの指導を受け厳しい食事制限などを実施したところ、約3ヶ月間で強い皮膚炎の範囲は狭くなったものの、部分的には強い皮膚炎が残った。
高校進学を前に、良好な皮膚状態を取り戻したいと当院を受診。入院となった。

検査結果#77

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

入院後の経過

耳周り・鎖骨・腕・足首・脚・腕など、顔と体幹部を除く広範囲に強いアトピー性皮膚炎が生じていた中学生の患者さんです。
入院後は非ステロイド治療と並行してバイオ入浴を実施。経過は比較的順調で、1ヶ月経過時点の検査結果からも良好な改善がうかがい知れます。

特に自覚症の値【POEM】が最高値の28点(最重症)から一桁台まで低下していますが、自覚症の軽減は、掻き傷からの出血や落屑、不眠などの生活上の不快感や困難が減ったということを示します。

客観的な血液検査のデータでも、炎症の程度を示すTARCや細胞破壊の指標LDH、急性期のアレルギー反応を表す好酸球が、退院時には基準値内や基準値目前まで軽減していることが確認できます。

そして、検査結果以上に改善を物語っているのは、画像によって確認できる皮膚炎の状態の変化です。
長い間苦しんでいた激しいアトピー性皮膚炎から徐々に解放され、本来の状態に戻っていっています。

退院から1年数ヶ月が経過した2023年2月、当院のInstagramを通じて、体調良く過ごしていることを報告してくれました。

ドクターコラム

入院前は、お母さんの努力もあってストイックな食事制限に取り組んでいたとのことですが、食事の管理だけではこれ以上どうにもならないと考えた両親に背中を押されての入院でした。

自宅から遠く離れた場所、見知らぬ人に囲まれての入院治療には不安も大きかったようですが、約2ヶ月間の入院生活を、ホームシックを乗り越えながら過ごしていました。
同時期に入院していた患者さんに20代前半など比較的年代の近い方が多かったことも、彼女には心強かったようです。

入院中に一緒だった他の患者さんの存在が、前向きに治療に取り組む支えになったと話す患者さんは多く、当院の療養環境の一部とも言える状況となっています。

中高生のような未成年者を離れた病院(クリニック)に一人で入院させることは、患者本人だけでなく保護者も不安を覚えることかも知れませんが、全国各地からの多様なバックボーンをもつ各患者さんと交流する経験は、そうそう得られるものではありません。

保護者の方は、症状の改善についてだけでなく、大人に囲まれた数ヶ月間の入院生活で一回りたくましくなった我が子に感動することも多いようです。

2~3ヶ月間の入院というと長い期間にも思えますが、この先の人生を健康でより有意義なものにするためと考えて、前向きに治療に取り組んで頂きたいと考えています。

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