治療の現場から

       

その皮膚炎、薬が原因かも!?薬剤アレルギーを知っていますか? 久保Dr.からのアドバイス

2025.06.01治療の現場から

著者のプロフィール

院長

ナチュラルクリニック21 院長 久保 賢介
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介

アトピー性皮膚炎と薬剤アレルギー

アトピー性皮膚炎の診療をしていると、しばしば薬剤アレルギーの患者さんを見かけます。

私の経験では、当院に入院する患者さんの3分の1くらいの方は何らかの薬剤へのアレルギーを持っていて、知らず知らずのうちにアトピーやアレルギー性皮膚炎を悪化させています。

しかも、アレルギーを抑えることが目的の抗アレルギー剤や、一般に作用・反作用が穏やかだというイメージがある漢方薬にアレルギー反応を持っていて、皮膚炎を悪化させていることに気がつかないことが多いのです。

漢方薬は、開始当初は効果が感じられることが多いものの、長期に使ってるうちにアレルギー反応を引き起こすようになってしまい、使用を中止することによって皮膚が改善するケースを数多く経験してきたため、現在、当院でアトピー治療に漢方薬を処方することは原則的になくなりました。

また、最近は抗アレルギー剤(中でも第2世代の抗ヒスタミン薬)による薬剤アレルギーが多くみられますし、中にはビタミン剤に反応している人もいます。

「アトピー性皮膚炎を少しでも改善できれば」、特に「夜も眠れないような激しいかゆみが改善できれば」とこれらの薬を使用するのですが、その後の治療経過を見ていると、なぜか改善が停滞する。あるいはやや悪化してしまうケースがあるのです。

こういった場合でも、肝障害を伴っていれば薬剤アレルギーに気が付きやすいのですが、そうでない場合は薬剤によるリンパ球試験「薬剤リンパ球刺激試験(DLST)」を行います。

薬剤リンパ検査機器

これは、血液から患者さんご本人のリンパ球を採取し、希釈した薬剤と接触させリンパ球が刺激を受けて活性化するかどうかをみる検査で、健康保険適用になっています。

DLSTの性質上、「検査結果が陽性だからこれが原因薬で間違いない」とは言い切れない部分もあり、また反対に「陰性だから原因薬でない」ともいえない面がありますが、結果を参考に薬剤を中止して、実際の変化を観察するという治療の過程では非常に役立っています。

薬剤アレルギーの影響が心配な方は、かかりつけ医やお近くのアレルギー科等で相談するといいでしょう。

実際の症例

実際に、薬剤アレルギーが治療に影響を及ぼしていたアトピー性皮膚炎患者さんの症例をご紹介します。

岐阜県 男性 70代

この患者さんは受診の2年前から全身性のかゆみがあり、特に半年前からは夜間のかゆみで眠れないという症状で受診されました。

この時期に行った血液検査では、皮膚炎の程度を示すTARCが1000~3000pg/ml (基準値は450pg/ml 以下)、急性期のアレルギー炎症を反映する好酸球は10%と、ステロイド外用ではコントロール不良でした。

基礎疾患としては胸腹部の動脈瘤があり数種類の薬剤を内服していたのですが、9種類の薬剤でリンパ球試験を行なったところ4種類で陽性が出ました。

最終的には全ての内服薬を中止することによって痒みは消失しました。

滋賀県 男性 20代

生後間もなくアトピーを発症し、標準的なステロイド治療を受けていた患者さんで、大学入学後、知人が脱ステで改善したことを知って自身も脱ステを実施。

リバウンドには波がありましたが最終的にコントロール不良となり、日常生活も困難となって入院なさいました。

約3ヶ月間の当院への入院治療で、当初55000(pg/ml)を超えていたTARCは6000台まで低下(改善)

本来であれば、当院退院の目安であるTARC2000程度まで低下しての退院が望ましいところですが、学業との兼ね合いもあり、自宅や大学に戻ってからも、くれぐれも養生するように念押しして退院となりました。

入院期間の終盤、改善のペースが鈍り、皮膚の赤みがなかなか取れなかったことをきっかけに内服薬へのリンパ球試験を行ったところ、3種類の抗アレルギー剤に反応が見られ投薬を中止。

退院後に行った2度の診察でも自覚症状チェックのPOEMはともに3点(最高値28点)と、退院前の7点から値が減少(改善)し、症状を良好にコントロールしながら学生生活に復帰していました。

外用薬へのアレルギーも

薬剤にアレルギーを生じることがあるのは外用薬でも同様で、”保湿剤だからと安心していたらアレルギーの原因だった”などという事もしばしばあります。

改善が思わしくないときは塗布する軟膏を部位ごとで変えてみて、経過を観察するなどの注意が必要で、アレルギーの治療薬にもアレルギーを起こす可能性があるということを念頭に置く必要があります。

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