アトピーの食事療法

アトピーをきっかけに食生活の見直しをしてみます。
なぜなら人間の体は全て、自分の口にしたもので出来ているからです。
好きな食べ物や嫌いな食べ物など、今までどんな食事をしてきたかを振り返ってみましょう。

  • 調理風景
  • 調理風景人気メニューの豆腐と重ね煮のハンバーグ

本当の健康食とは

昔の日本人が食べていた粗食とも言える食事こそが、一番の健康食です。
子どもの頃からファストフードやコンビニ弁当、スーパーの総菜に慣れ親しんで育った方は、入院中に本当の健康食を体験して頂きます。
高脂質でハイカロリーな食事に慣れた患者さんは物足りなく感じることもあるようですが、こういった食事を退院してからも生活に取り入れていくことが、ご本人だけでなく、家族の健康にもつながると考え食事指導をしています。
退院後も、調理方法や栄養素についてなど、管理栄養士からの指導を参考に食生活を組み立てて頂きたいと思います。

アトピー性皮膚炎の治療食

  • 当院の入院食は、院長の指示のもと、管理栄養士が献立をたてて調理員が調理しています。
    重視しているポイントは主に以下の5項目です。

    治療食
  • 1. 発酵玄米を提供

    発酵玄米は寝かせ玄米とも呼ばれていて、炊いた玄米を炊飯器で保温のまま 3日程寝かせ、活性化した酵素の働きで栄養価が高くなったご飯です。
    普通に炊いた玄米と違って触感はおこわのようにもちもちと柔らかく、甘みも増して食べやすくなっています。当院でお出しする主食は、基本的にこの発酵玄米です。
    玄米は栄養が豊富なのに加え、体内の酵素を増やしてくれる生命力のある食べ物です。(マグネシウムは白米の6倍、ナイアシンは14倍です。)

    2. 摂取カロリー・脂質をコントロールする

    アトピーの原因は病原菌の皮膚感染です。
    カロリーや脂質が過多になると、マラセチアという病原菌が好む皮脂の分泌が増しますので、適正なコントロールが必要です。
    また、ハイカロリーな食品はアレルギーを促進するものも多いため、注意が必要になります。

    3. リノール酸を減らし、EPAやDHA、オメガ3の摂取を推奨

    一般的に食用油脂はリノール酸とαリノレン酸に区別されます。
    リノール酸は体内でアラキドン酸という物質に変化し、アレルギーを促進したり、炎症に拍車をかけます。
    アトピーの食事療法では、このリノール酸をなるべく摂取しないよう、肉食や乳製品を減らし、サラダ油をオリーブオイルに換えたりすることをお勧めします。
    反対に、αリノレン酸は体内でアレルギーを抑制しますので、EPAやDHAを含む青魚や亜麻仁油などは積極的に摂ることをお勧めしています。
    以下のグラフは、当院の入院食による血清アラキドン酸低下のデータです。体内の痒み物質は食事を変えることでも低下します。

  • リノール酸
    • 日本食による血中アラキドン酸変化
    • 血清アラキドン酸数値

    4. トランス脂肪酸・合成甘味料を排除

    〈トランス脂肪酸の危険性〉
    普通、植物油は常温では液体ですが、これをバターやラードの代用品にするために、水素を添加して常温でも固まるようにしたのが、マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸です。
    トランス脂肪酸は、冠動脈性心疾患にかかるリスクを高めるなど、人体への悪影響がわかっています。
    アメリカで行われた疫学調査では、トランス脂肪酸の摂取量が多い群ほど体内で炎症が生じていることを示す炎症因子(CRP)や細胞接着分子が高いことが示されています。この炎症因子についてはアトピーなどのアレルギー症へ悪影響をおよぼす疑いがあると言われています。
    欧米では、何年も前からトランス脂肪酸の使用を禁止している国がいくつもありましたが、近年日本でもその危険性がやっと知られてきました。

    〈人工甘味料の危険性〉
    精製された砂糖はもちろんなるべく摂るのを控えるべきですが、例えば、清涼飲料水などによく使われている人工甘味料のアスパルテームの化学的成分は、脳内のドーパミン生成を阻害してパーキンソン病や鬱病を引き起こすと言われています。
    原則は加工食品を減らし、なるべく手作りするようにして、自然の甘味料を使うことです。当院では、患者さんには羅漢果という自然の甘味料をお勧めしています。

    5. 腸内環境を意識する

    腸内環境を整えるためには、野菜中心で食物繊維が多く発酵食品を含んだ食生活を続けることが大切です。
    腸内環境が便通だけでなく体の免疫や心理状態にまで影響を及ぼすことは、近年【腸内フローラ】という言葉とともによく知られるようになりました。
    当院では、入院患者さんの腸内の腐敗状況を調べる検査を定期に実施し、腸内環境の改善に役立てています。

    インドール検査分離した下の部分の色で判定。青色が濃いほど、腸内が腐敗傾向にあります。

    食物アレルギーがある方への入院食の提供について

    食物アレルギーのある入院患者さんの食事については、アレルギーの程度や品目によって、どの程度除去をする必要があるかを医師が判断しています。
    アナフィラキシーショックを生じるなど、強いアレルギー反応を生じる恐れがある食品がある場合には、入院申し込みの手続き段階で必ず申し出て下さい。

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    こんな食品にも注意

  • 飽和脂肪酸
  • 牛乳

    牛乳はアトピーや喘息、花粉症悪化の原因になります。
    高温殺菌処理で有用な成分はなくなっているだけでなく、消化が極めて悪い「飽和脂肪」を大量に含んでいて皮膚の脂質分泌が増加します。
    日本人の多くは乳糖を分解できない乳糖不耐症であるため、牛乳を飲むと下痢を起こし、腸粘膜が弱って、「腸壁バリア」によるアレルギー抑制の働きが崩れます。
    また、乳牛にはホルモン剤を与えるのが一般的ですから、牛乳に残留するホルモン物質の影響も憂慮されます。

    動物性タンパク質の過剰

    上記の牛乳にも言えることですが、「動物性タンパク」はきわめて消化が悪く、腸内環境に著しい悪影響を与えるアトピーの悪化原因です。
    (腸には体の免疫システムの60%以上が集中していますから、腸内環境の悪化は免疫の正常な作動を妨げます。)

    「動物性食品の過剰」は次のような悪影響を生じます。

    動物性食品の過剰摂取 ⇒消化困難な動物性タンパク質が大量に腸に送り込まれる
    ⇒タンパクが分解されずに腸壁から入り込み、アレルギー反応を生じる
    ⇒腸内に有毒ガス・活性酸素が発生し、腸壁を傷つける
    ⇒常に未分解のタンパクが腸壁を通過する
    ⇒腸内細菌バランスが悪化し、悪玉菌が増加する

    腸内細菌叢を維持するためには、動物性食品を取り過ぎないことが大切です

    いい油・わるい油

    アトピーを改善させる油の取り方

    リノレン酸

    しそ油・あまに油(亜麻仁油)・エゴマ油は、αリノレン酸の油で、アトピー抑制効果を持ちます。酸化しやすいので、火にかけずドレッシングなど生のまま摂取するようにしましょう。
    〈αリノレン酸が多く含まれる食べ物〉
    かぼちゃ・ねぎ・ピーマン・トマト・ほうれん草・大豆・青魚・えごま・しそ・白菜・キャベツ・大根・味噌・果物・海藻類

    オレイン酸

    加熱調理する場合は、オレイン酸を多く含んでいるオリーブオイルを使います。
    オリーブオイルは酸化しにくく、アトピーへの悪影響が少ない油ですが、トランス脂肪酸を少なからず発生しますので、油を大量に使う揚げ物などは控え、なるべく少なめに使うことが必要です。

    リノール酸

    リノール酸は必須脂肪酸ですが、現代人は必要量の6倍も摂っていると言われていて、通常の食事で不足することはありません。
    リノール酸は体内でアトピーを悪化させるアラキドン酸に代謝されますから、リノール酸の調理油は控えましょう。
    また、酸化しやすいため、揚げ物などに使った油を使いまわすのは絶対避けてください。

    マーガリン

    マーガリンは、トランス脂肪酸が大量に含まれる油に水素を添加して固体化させた工業製品であり、もっとも悪い油です。
    「マーガリンは植物性だから、バターよりも体にいい」という神話は、いったい誰がつくりだしたのでしょう?
    トランス脂肪酸は、アトピー性皮膚炎や喘息だけでなく、様々な健康被害をもたらしていることが最近の研究で明らかになっています。

    DHA・EPA

    青魚に多く含まれるDHA、EPAは、アトピー改善にお勧めできる油で、特にEPAは非常に大切です。青魚が苦手な人はサプリメントで摂取することもできます。
    〈DHA・EPAの効果〉 アトピー、喘息、花粉症の抑制・脳の働きの活性化・血液をさらさらにする・動脈硬化や脳血栓の予防・低コレステロール化

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