治療の現場から

       

注意喚起:民間療法による健康被害情報

2019.07.23治療の現場から

症例1 Aさん 2010年(再入院の8年前)に入院歴がある患者さん

退院後はバイオ入浴を継続的には行っておらず、今回、全身性にアトピーが悪化して入院となりました。入院時の血液検査でTARC9000台(アトピー性皮膚炎の重症度を示す血液マーカーで、正常値は450以下、重症は3000以上、6000以上で最重症)の最重症患者です。
今回の入院では当院の推奨するバイオ入浴を行い、マーカーは順調に低下。皮膚炎は改善していました。
しかし、過去に推奨外製品によるマコモ風呂行っていた際、様々な情報をインプットされていた事からその製品を使えばもっと簡単に治るはずだという思い込みを持っており、入院中、自分のお風呂場の浴水を全て捨て、持ち込んだ推奨外製品を新たな浴水に投入して、入院の66日目から125日目まで独自に使っていました。
次のグラフは、入院から退院までの間のTARC値の推移です。
入院後、バイオ入浴を行い9255から1788まで低下していたTARCは、推奨外製品の使用を開始した時期から再上昇し、5013まで再悪化しています。
当院では、TARCが1000を下回るのを退院判断の目安の一つとしていますが、この患者さんは退院までもうひと息という時に、マコモ風呂への盲信によって再悪化してしまったことになります。
独自の入浴方法に切り替えてから2ヶ月間ほど悪化が続き、さすがに患者さんは不安になって一部始終を話してくれました。

入院126日目から当院の推奨する粉末に戻すとTARCは再び低下。5013から1084にまで改善して退院なさいました。

院長である私は、順調に改善しておられた患者さんが急に悪化していく中で、改善のために医師として様々な治療を試みました。しかし、質の悪い浴水への入浴を続けていたのでは、治療は非常に困難です。
当院では重症患者さんの入院期間を通常2~3ヶ月に設定していますが、この患者さんの入院期間が5ヶ月間にまで及んだのは、患者さんが独自の判断で、当院が推奨するバイオ粉末を使用しなかったことにあると、私は結論付けています。
しかも、大変残念なことに、Aさんは入院中に仲良くなった別の患者(症例2・Bさん)にも同じように他社製品を使用するように勧め、Bさんはそれに従って健康被害に遭われていました。
Aさんからの勧めがあった時点で、Bさんから私たちに情報提供や相談をして頂けるような信頼関係が作れていなかった点は、大いに反省せねばなりません。
同時に、今後このような健康被害や社会的損失を生み出すことがないよう、様々な情報提供を行っていく必要性を痛感する出来事ともなりました。

症例2 Bさん 入院時のTARC 13805 最重症状態で入院した患者さん

2015年に一度入院なさったことがありましたが、家族の事情でバイオ入浴を自宅継続することが困難となり、退院後は実施していませんでした。
退院後の約3年間、徐々に悪化しながらもなんとか生活していたそうですが、受験のストレスなども重なって重症化し再入院となりました。
入院2週間後の検査では順調に症状の改善が見られましたが、症例1に紹介したAさんの強い勧めによって、Aさんと同様、入院2週間後頃から当院が推奨する入浴液を捨てて、推奨外製品を使い始めました。
ところが症状は改善するどころか次第に悪化していき、余りの痒さに精神的に追い詰められ、独自使用の開始から40日目にこの事実をスタッフに話してくれました。
入浴液を元に戻すとTARCの値は17937から2961にスムーズに低下。家族の理解も得て、自宅で継続できる環境を整えてから退院なさいました。入院日数はAさん同様150日(5ヶ月間)にもなってしまい、他の入院患者さんは短期間で改善しどんどん退院してゆく中、この2名は特異な状況となっていました。
この例も、症例1と同様に某社のマコモ粉末がアトピー性皮膚炎を悪化させ、当院推奨の粉末やバイオ入浴のメソッドがアトピー性皮膚炎を改善させていることがわかります。

二つの事例は、図らずも、当院がバイオ入浴に推奨している粉末や管理方法の優位性がよく分かる症例となりました。

通常、治療者(医者)による患者さんの皮膚の観察や、患者さん本人の自覚症状は、どうしても人間の心理が反映してしまうため客観的データにはなりにくい面があります。
しかし、これら事例では、浴水を入れ替えていることを私もスタッフもまったく知らされておらず、治療者対して完全にブラインド状態でした。
また、特に症例1の患者さんは、飲用も含めた民間療法的手法に対する確信を持っていたため、プラシーボ効果も働いていたはずです。
それだけのバイアスが働く条件の中、なおかつ食事や生活環境も同一条件の入院環境の中で、血液検査マーカーという客観的なデータを通じて両者の違いが確認されたのです。

多くの民間療法は、科学的エビデンスのない個人的体験や伝統、伝説に支えられていますが、過度な流言飛語は無責任と言わざるを得ません。安易に民間療法を勧める事は、勧めた側の社会的信用を失墜させ、この事例のように人間関係を壊すこともあります。
当院がバイオ入浴の開発・研究にあたりエビデンスにこだわっているのは、こういった不幸な出来事を生じさせたくないからというのも一つの理由です。

症例3 20代男性Cさん 入院時TARC5011の重症アトピー性皮膚炎患者

Cさんは、当院での2ヶ月間の入院治療でTARCは5011から1433まで低下し退院しましたが、退院1ヶ月後の外来受診時には、復帰した職場(製造業)での発汗などが原因でTARCが7044まで悪化。
退院直後、生活環境の変化や職場復帰等のストレス増加が原因とみられる悪化を生じた例は、過去に退院された患者さんにもたびたび見られますが、多くの場合、意識的に生活を整えながらバイオ入浴を継続することで落ち着いていきます。
しかし、Cさんは生活面の見直しではなく、ネット上で見つけた推奨外品(液状のマコモ製品)に変えるという方法を試してしまいました。結果的に、症状は更に激悪化してTARCは11977まで上昇。※この値は入院時の約2倍です。
外来受診時に、悪化の理由について思い当たることがないかたずねたところ、推奨外品の使用を話してくれました。直ちに当院が推奨する発酵粉末でのバイオ入浴を再開し、以後、症状は徐々に改善して安定を取り戻しました。
似ているから、同じ真菰を原料とした製品だからと、安易に混同してしまうことは非常に危険なことがよく分かる事例です。

 

症例4 退院後も安定した状態を保っていた 30代 女性のDさん

当時6歳と3歳の二人の子どもさんにもアトピー性皮膚炎があり、子どもたちの症状に不安を感じていたDさんは、当院に入院歴がある別の患者Xさんから紹介された推奨外品を組織で販売している販売員に、湯船に2.2kg以上にもおよぶマコモ粉末を入れることと内服を勧められ、それに従いました。
しかし、入浴を開始した直後から皮膚炎は悪化し始め、2週間ほどで蕁麻疹が生じて改善しなくなりました。救急を受診し点滴を受けましたが改善せず、総合病院を紹介されて受診。2日間入院してステロイド点滴とステロイド内服を行い、ようやく改善したそうです。
一緒に入浴していた娘さんも多発リンパ節腫脹が生じ、入院治療が必要になりました。

症状が悪化した際にDさんが相談した上記の販売員や製造会社の担当者は、「我が社の製品は、体の毒を出す力が強いためにそういう症状が出るのであって、辛ければステロイド外用を使用するように。症状が落ち着くまで3年間我慢するように。」とアドバイスをしたそうです。

これは、排毒の炎症をステロイド剤で抑えなさい。という破綻した理論です。
上記のような事例は、民間療法の健康被害としては典型的なものかも知れませんが、医療行為として警察に通報されてもおかしくない案件です。

症例5 退院後もバイオ入浴を行っている40代 女性のEさん

Eさんは、当院の元患者を名乗る人物からSNSを通して推奨外品の販売員を紹介され、この販売員から当院推奨外品の液状真菰製品10ℓを購入し、投入して入浴するように言われ実行しました。
また、同製品を毎月4ℓ購入し継ぎ足すように促され、これも実行しました。

販売員からは「真菰の発酵粉末を飲んだほうが早く治る」と内服も勧められ実行しましたが、次第に皮膚炎は悪化していったそうです。

なぜ改善しないのか販売員に質問しても説明はほとんどなく、「真菰は体の掃除をする」の一点張りで不安になって当院に相談なさいました。

患者のみなさんに気をつけ頂きたいこと

インターネット上には、当院の元患者を名乗る人物がブログやSNSを通して、「マコモ風呂 ナチュラルクリニック21 バチルス入浴(バイオ入浴の旧称)」などを併記し、お湯を変えず簡単などという宣伝文句でユーザーを集めているのが散見されます。
個人の体験談を述べて販売員を紹介し、同時に当院の悪口やでたらめ、当院推奨外製品の有効性を大量に聞かせますが、その中には私個人や当院の名誉を毀損するような内容も含まれています。

元患者を名乗ってブログ・SNSを展開している人物は複数名いらっしゃいますが、中には推奨外品の販売会社との利害関係があり、準販売員として活動されている人もいるようです。

当院の名前を利用して、あるいは当院の患者をターゲットにしてユーザー集めを行い、健康被害を蔓延させているのは許しがたいというのが、院長である私の正直な気持ちです。
このサイトをご覧になる方には、くれぐれもご注意いただきたいと思います。

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