臨床効果の研究報告

ここでは、バイオ入浴の臨床効果と、科学的なエビデンスについて解説します。
医療関係者や健康分野のメディア関係者をはじめ、一定以上の知識を有する方を対象にバイオ入浴の臨床効果をご紹介します。一般の方には難解な部分もあるかと思いますが、ご了承ください。
なお、以下の研究は観察研究・レロスペクティブスタディーとして院内の倫理審査委員会の承認を受けて行われたものです。

研究① 研究の内容

■対象患者

対象患者は2010年2月1日からの1年間にステロイド外用などの一般治療にて症状のコントロールが得られず、本人の希望で当院に入院し、バイオ入浴(BSC=Biological Spa Care)を1ヶ月以上行った患者計30名(男15名 女15名)です。

■重症度・治療歴

対象者はいずれも、目視によるアトピー重症度の評価方法(SCORAD SCORE)の値が40以上の重症患者です。
平均年齢は30歳で、発症時期は乳幼児期発病が21名(70%)、7~19歳4名(13%)、20歳以降は5名(17%)、平均罹患期間は22年で全員が長期のステロイド外用治療経験があり、多くの方が何らかの代替医療を経験していました。
抗原別のアレルギー反応の値を調べる血液検査(RAST)では、マラセチアへの反応率100%をはじめ、ほとんどの方が代表的な各抗原に反応を示しています。

RAST検査の結果

■治療方法

平均在院日数は92日間。患者自身の希望により1日4時間程のBSCを行っています。
強い痒みや発赤などには経口の抗アレルギー剤、漢方薬、非ステロイド外用剤を使用していましたが、ステロイドやシクロスポリンなどの免疫抑制剤の外用・内服、抗真菌剤の外用・内服は使用していませんでした。
なお、入院後、患者の約半数にステロイドなどの免疫抑制薬中止によるリバウンドが見られました。

■評価の方法

効果の評価基準として、肉眼での見た目上の評価(SCORAD SCORE)と客観的な基準となる血液マーカーTARC、LDH、好酸球、 IgEの値を使用しました。
なお、対象患者の内1名は一過性の原因不明肝炎が生じた為、影響を受けるLDHの判断からは除外しました。

・統計解析ソフト Statcel 3
・差の検定 Wilcoxon signed-ranks test
・相関関係 Pearson’s test
データは平均±標準誤差で示した。

■結果

  • SCORAD SCORESCORAD SCORE(目視による皮膚炎の程度)
    入院時69.3±2.2退院時22.5±1.5 58.6%の改善(n=30 p<0.01)
  • TARCTARC(アトピー症状を最も敏感に反映する血液中の化学物質)
    入院時12107±3202、退院時1238±195、89.8%の低下(n=30 p<0.01)
  • LDHLDH(細胞の破壊、炎症の程度を示すマーカー)
    入院時344±20退院時198±8 42.4%の低下(n=29 p<0.01)
    対象患者29名の内、正常値(245)以下まで改善した著効例は25名(86.2%)
  • 好酸球好酸球(アレルギー体質の程度・急性期のアレルギー反応を反映)
    入院時20.5±2%退院時8.7±1% 57.8%の低下(n=30 p<0.01)
    対象患者30名の内、二分の一以下までに改善した著効例は20名(66.7%)
  • 非特異的IgE非特異的IgE(Ⅰ型アレルギーを引き起こす抗体の量・長期的にはアレルギー体質の程度を反映)
    入院時12535±2846、退院時9595±2520 23.5%の低下(n=30 p<0.01)

■効果結果のまとめ

SCORADおよび4種の血液マーカーはいずれも有意に改善しており、著効例がほとんどでした。
特に、SCORAD SCOREは全員改善していましたが、入院そのものによる改善効果を考慮して、SCORAD、TARC共に30%以上の改善がないものは無効例として判断しました。
有効例は30例中28例と、全体の93.3%でした。

■無効例・副作用

無効例と判断した2例の内、1例(患者A)はSCORAD SCOREは改善しましたが、TARCの改善が得られませんでした。
もう1例(患者B)は、入院時よりIgEは正常値で、入浴開始から2ヶ月経過した後、入浴後に湿疹が生じるようになりBSCを中止しました。
副作用としては上記のBSC中止例1名(患者B)以外に、2名(患者C、D)に好酸球の上昇(38~47%)と、発熱と発赤を伴うアレルギー性の全身性の紅斑が生じBSCを中断しました。
2名とも経過観察のみで回復し、1名(患者C)は1週間の中断後BSCを再開することができました。
もう1名(患者D)は、その後BSCを再開することはありませんでしたが、BSCを行う前より皮疹は改善して退院となりました。BSCを中止せざるを得ない副作用の発症は2名(6%)でした。

  • 副作用の発生状況
  • 中断・中止発生状況

研究②

■治療前後でのTh1/Th2比の測定

2013年5月27日~同年7月20日までに入院し、BSCを行ったアトピー性皮膚炎患者の中から中等症以上の患者5名をランダムに選定し、治療前後の末梢血のTh1とTh2の値並びにその比率を測定。
同時にTARCと好酸球(Eo%)の変化を比較しました。

5名とも皮膚炎は著効を呈しTARC、Eo%は著明に低下しています。Th1/Th2比は全員でTh1優位に偏移しています。
BSCでは多種多量のバクテリアや植物由来のLPS(リポポリサッカライド・免疫刺激物質)に全身の皮膚が接触することにより、Th1系の自然免疫が活性化すると同時に、「Treg誘導」という作用によって過剰なTh2が抑制され、Th1/Th2比が改善したものと考えられます。

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