治療の現場から
8年間ひきこもり アトピーを乗り越えて退院し社会復帰に成功 入院期間:2017年9月~11月:症例32
2017.11.10治療の現場から
30代女性
入院までの経緯
幼稚園時から鉛筆が握れないほど手に湿疹が生じ、ステロイドの外用薬を使用していた。
小学校に入るとアトピー性皮膚炎は次第に全身性に拡大し、小学3年時からは喘息も加わるようになった。
ステロイド外用とワセリンを使用し、高校では次第に色素沈着が生じてきてはいたが、クラブ活動も可能な程度にコントロールできていた。
大学に入学して一人暮らしを始めた頃から症状が悪化。ステロイド外用も強化されたが、次第に色素沈着とこわばりが拡大した。
就職後、20代後半でステロイド外用の効果が感じられにくくなり、皮膚炎が持続するようになったため、脱ステロイドを実行。リバウンドでアトピーが全身性に悪化して退職することになった。
その後2年間は、自宅で寝たきりの状態で過ごしたが、5年経過しても皮膚炎は持続した。
皮膚の乾燥と亀裂による痛みで起き上がるのも苦痛だったことと、膿臭さが続いたこともあって、引きこもり生活が約8年間にわたって続いていた。
インターネットで当院を知り、九州の自宅から家族の手助けを得て受診し入院。
手指の強い皮膚炎が改善した他の症例
病歴約50年の重症患者 物を握ることが辛かった手も劇的改善 入院期間:2019年6月~7月:症例42
検査データの見方はこちらのページをご覧ください。
入院後の経過
入院時の検査結果でIgE 34935IU/ml、TARC 4396pg/ml、好酸球15.9%、顔面を含む全身に乾燥性の重症性皮膚炎が生じていた患者さんです。
脱ステから約8年という長い年月で皮膚炎は慢性化し、滲出液や発赤といった急性炎症はないものの、角質化、苔癬化が進んで皮膚のコラーゲン組織が壊されて、柔軟性や本来の肌理(キメ)が失われていました。
脱ステロイド後、この慢性の乾燥性皮膚炎で留まっている患者さんは多くいらっしゃいます。
入院直後は痒みや亀裂による痛みからの不眠や、引きこもり生活からのコンプレックスもあり不安もあったが、多くの重症アトピーの患者さんと生活を共にしながら、バイオ入浴と食事療法で日々確実に改善していくことを実感ていたようです。
約2ヶ月間の入院で、疾患を克服できる確信と自信を取り戻して退院されました。
退院時には、TARC1643、好酸球11.3%に改善。
皮膚の亀裂による痛みもなくなり、皮膚の柔軟性も回復しています。退院後も皮膚は一層改善し、就職・社会復帰を果たされました。
長年苦労してきたアトピー性皮膚炎が、自然免疫を賦活(ふかつ)させることでコントロールできる可能性があることを、より多くの方に知っていただきたいと願っています。
アトピーによる長期自宅療養
この患者さんのように、アトピー性皮膚炎のために長期の自宅療養を経験した患者さんはたびたびいらっしゃいます。
年単位に及ぶ社会的なつながりが薄まった生活、ましてや体調の改善・回復にも出口が見えない状態とあれば、精神面へのダメージが大きいことは明白です。
当初は療養のために自宅から出られなかったのに、そのうち外に出ること・外部の人と関わることそのものが怖くなってしまって、ひきこもり状態となってしまうケースもあり、それが治療の足を引っ張るという悪循環に陥っていたりもします。
当院が入院中に患者さんへの心理カウンセリングを用意しているのも、このような方へのケアを考えてでもありますが、入院直前まで社会生活を送っていた方であっても、大なり小なり、何らかの心理的課題を持っていたりするものですし、専門家の心理的サポートは、前向きな考え・姿勢の維持に役立ちます。
「カウンセラーによる心理カウンセリング」というと、身構えてしまう患者さんもたびたびありますが、気軽な相談相手として、入院中のカウンセリングを活用して欲しいと思っています。
長い自宅療養の末に入院なさった他の症例
長年の自宅療養から入院を決意し2ヶ月で改善 入院期間:2019年5月~6月:症例41


