治療の現場から
あなたは外因性?内因性?アトピーにもタイプがあります:久保Dr.からのアドバイス
2025.08.13治療の現場から
院長 久保 賢介 のプロフィール
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介
アトピー性皮膚炎の内因性と外因性の違い
アトピー性皮膚炎は、その原因や体の状態によって、大きく分けて「外因性」と「内因性」の2つのタイプに分けられることをご存知でしょうか。
この2つのタイプを知って、自分がどちらのタイプなのかを知っておくことは、病気をより深く理解して治療に取り組むためにとても役立ちます。
外因性アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の多数を占めるタイプで、IgEという抗体が関わるアレルギー反応によって起こると考えられています。
血液検査ではIgEの値が高く、ダニなどの特定の物質に対するIgE抗体(RAST検査で判定)も陽性であることが多いという特徴があります。また、皮膚のバリア機能が弱いことが多いとも言われています。
原因
体の外のものに対してアレルギー反応が起こることで症状が生じたり、悪化したりします。
皮膚のバリアが弱い状態だと、ダニ、花粉、カビ、ペットのフケといった身の回りのアレルゲンにも皮膚が敏感に反応しやすくなり、それによって体の免疫システムが過剰に反応し、炎症やかゆみを引き起こします 。
その他にも、暑さや湿気、寒さや乾燥、汗、紫外線、ハウスダストといった生活環境も症状を悪化させる可能性があります。
発症時期や症状の傾向
外因性アトピー性皮膚炎は、多くの場合、小児のうちに発症し、喘息やアレルギー性鼻炎を合併することもよくあります。
赤ちゃんの頃は頭や顔に湿疹が出ることが多く、その後、体や手足に広がっていきます。
症状は季節によって良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、乾燥しやすい冬や春先、夏の運動時などに悪化することがあります。
内因性アトピー性皮膚炎
内因性アトピー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎全体の約20%と言われており、外因性とは違って血液検査でのIgEの値は正常か少し高い程度で、ダニなどの一般的なアレルゲンに対するIgE抗体もあまり見られません。
そのため抗原が特定しにくい点があります。
皮膚のバリア機能は、外因性のアトピー患者さんと比較してしっかりしている傾向があります。
原因
内因性アトピーはIgE抗体の関与は少ないもののTh2型炎症は存在しています。最近では自然免疫系リンパ球ILC2が深く関わっていると考えられています。
発症時期や症状の傾向
外因性アトピー性皮膚炎と同じくかゆみが主な症状ですが、発症年齢は外因性よりも遅く、外因性と比較すると症状が軽いことが多いとされています。
また、痒疹(かゆみを伴う丘状の硬いしこり)は内因性アトピー患者さんに生じることが多いと言われています。
最後に
このように、アトピー性皮膚炎は外因性と内因性という2つのタイプに大きく分けられ、それぞれ悪化要因や免疫の特徴、発症しやすい年齢や性別、合併しやすいアレルギーなどに違いがありますが、皮膚に病原菌(黄色ブドウ球菌等)が異常繁殖して、その病原菌が発する毒素によって皮膚炎が生じていることは共通しています。
当院で入院治療やバイオ入浴を行った症例では、外因性・内因性いずれのタイプの患者さんにおいても同等の効果が得られており、患者さんのご協力のもと、これらの症例を積極的に公開するように努めています。
この記事と同時期に、内因性アトピー患者さんの症例を新たに1件公開しましたが、その患者さんのケースでも黄色ブドウ球菌を培地で培養すると、次の写真の通り入院時と退院前で、黄色ブドウ球菌のコロニー数に歴然の違いがみられます。