治療の現場から

ステロイド治療に行き詰っていた男性 痒疹も消失した 症例:61

2021.04.10治療の現場から

40代 男性 入院期間2020年12月~21年2月

首

首

入院までの経緯

幼児期から、汗をかきやすい関節部や背中にアトピー症状が生じることがあったが、軟膏類を使用して改善。学童期から学生時代もときどき症状が生じることはあったが、特に治療はせずに過ごせていた。

社会人になり、皮膚の乾燥や手荒れで皮膚科を受診することがあったが、数日保護テープを使う程度で改善した。入院の1年くらい前から、夜入浴後に蕁麻疹が出現し、朝には消失というサイクルを繰り返していた。

胸

胸

入院年の5月、新型コロナウイルスの流行に伴い経営する飲食店を1ヶ月間休業。
休業中は、レシピ研究のため料理(フライドポテト・プリンなど)を作っては試食する日々を送っていた。

6月には目の痒みが生じたが、ステロイド入りの点眼で改善。しかし、7月から体に点々と湿疹が生じるようになったため近医皮膚科を受診し、処方されたステロイド軟膏とプロトピック軟膏を塗布した。

背中

背中

すぐに効果はあったが、減量しては悪化するというサイクルを繰り返し、次第に皮膚炎は悪化。
痒疹(隆起した湿疹で強い痒み)が全身に生じるようになった。

他院に転院して1ヶ月間ステロイドの内服治療を受け、全身の湿疹は改善したが痒疹は残存したままだった。
その後、ステロイド内服減量に伴い痒疹は全身に拡大。7月からは頭髪も多量に抜け始めていた。
治療に限界を感じ、インターネットで情報を集める中で当院を知り受診。後日入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果

入院後の経過

全身に痒疹を伴った強い皮膚炎が生じている患者さんで、頭皮の脱毛もシビアです。
初めて外来を受診してから入院当日まで、仕事や身の回りの準備等のために2週間ほど期間が空いたのですが、入院に備えて後半の1週間はステロイドを使用せずに過ごしていらっしゃいました。

ステロイド使用を中止して脱ステロイド状態になると、症状は明らかに悪化。
いわゆる脱ステのリバウンド中に入院となったため、入院時は頭皮からの滲出液や落屑以外に悪寒も生じていました。

脛

脛

血液検査のデータでも、皮膚炎の程度を示すTARCが外来時(ステロイド使用中)の7720から入院時には23587まで急上昇しています。

入院後は、バイオにも取り組みながら治療を進めると症状は順調に改善し、1ケ月経過時点でTARCは2000を下回るまで低下、自覚症状を示すPOEMも満点レベルの26~28から10まで低下しました。
入院からちょうど2ヶ月間で退院なさいましたが、退院時の検査ではTARCや好酸球は基準値内に、POEMも4まで改善しています。

膝 膝

症状の改善は治療前後の写真からも明確で、若干の色素沈着はあるものの痒疹まで改善・消失している様子が一目瞭然です。
アトピー性皮膚炎でも痒疹を伴うものは治りにくく慢性化するケースが多いのですが、劇的に改善しています。

ドクターズコラム

新型コロナウイルスで生活に変化が生じ、皮膚炎が悪化したという患者さんは少なくありません。
もちろん、そのおかげで健康を取り戻せたという方もいらっしゃると思いますが、アトピーは日々の生活の積み重ねが症状に直結する疾患ですので、生活の急激な変化はマイナスに作用することが多く、この患者さんも、飲食店を休業中の試作・試食の高カロリーの食事が引き金になったと考えられます。

足の甲 足の甲

アトピー性皮膚炎は皮膚のマラセチア(酵母様真菌)や黄色ブ菌などの病原性微生物感染が原因であって、その感染に対して本来の免疫が作用せず、Th2主体のアレルギー反応が生じている状態です。

そこにステロイドを塗布すると一次的にアレルギーは治まりますが、本来の免疫まで抑制するため微生物感染が拡大してしまいます。この患者さんはステロイド内服も試していますが、リバウンドでさらに悪化していました。

腕

腕

このケースでは過食によるマラセチア毛包炎が皮膚炎の主体で、頭皮の脱毛もそのためですから、ステロイドオンリーのアプローチでは改善は困難であり、食事の見直しとバイオ入浴による本来の免疫の賦活が非常に効果的です。

皮膚炎はライフスタイルの投影でもあり、心理、代謝、免疫など多方面からの総合的なアプローチが必要だと考えています。

限定解除要件

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