治療の現場から

行き詰まりを感じていたアトピーが一転して改善! 顔のイボもきれいに! 症例:55

2020.10.29治療の現場から

30代 男性 入院期間2020年7月~10月

口元1 口元2

 

入院までの経緯

幼少期は特に皮膚症状はなかったが、中学校2年生頃、背中を中心として全身にアトピー症状が生じ、ステロイド外用を開始。

学生時代はステロイドを使用していれば症状は抑えられており、慢性的なかゆみはあるものの、一時はほぼ薬が必要ない時期もあった。

就職後はステロイドを使いながらワセリン保湿でコントロールできていたが、転職・引っ越し後、夜勤の仕事やストレスによりステロイドの使用量が増加。

6年間ほどかけて徐々にステロイド治療を強化していたが、徐々に疑問を持つようになり、自ら情報を集める中で治療の継続は望ましくないと考え、休職して脱ステロイドに取り組むことを決意。

額1 額2

脱ステロイドのリバウンドもあって症状が悪化したため、近医にて光線治療を開始し、9ヶ月間ほど治療に専念すると症状は多少改善したものの、程度としては重度のままで、就業もできず行き詰まりを感じていた。

故郷を離れて生活をしていたが、地元に戻ることにして家族で引っ越しをしたところ、作業や生活の変化に伴うストレスの影響もあり症状が悪化。

家族の勧めもあり、当院を受診して入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果

入院後の経過

全身に重症性アトピー性皮膚炎が生じている患者さんで、入院時は掻き傷や落屑が全身に認められます。

入院2週間前の初回受診時は、悪化の引き金となった引っ越しから時間が経過していなかったこともあり、検査データはTARCが30000超、IgEが約24000と非常に高値で、マラセチアやカンジダなどのカビに大きく反応していました。

入院時の検査では、TARCは4510と大きく低下していますが、アレルギー体質そのものを示すIgEは25958と大変な高値のままです。

デコルテ1

デコルテ2

入院後は数日で痒みが減少し、肌のごわつきも少しずつ改善に向かっていきましたが、2週間程経った頃からバイオ入浴による免疫変換の影響とみられる発熱や、リンパ節の腫れが生じるようになりました。

発熱は日によって38℃を上回ることもあり、リンパ節の腫れは腋下や鼠径部など複数個所に及びました。

このような反応もあり、1ヶ月経過の検査データはTARCや好酸球が上昇していますが、IgEが大きく低下していることから、アレルギー体質そのものが軽減してきていることがうかがえます。

背中1

背中2

また、Th1タイプの細胞性免疫が上昇した証として右頬に生じていたイボもきれいに無くなるなど、見た目での改善も確認できていたため、免疫変換に伴う発熱等が生じていてもご本人は前向きに治療に取り組んでいました。

入院2ヶ月経過の検査ではTARC1991、好酸球も順調に低下。

赤黒かった皮膚の色も正常に近づき、退院時のデータからも改善がよくわかります。

両腕1

両腕2

 

ドクターコラム

入院中の様子を見ていても、明るく積極的・社交的な青年ですが、症状は精神面の影響がとても大きいというのがご本人の分析でした。

小児期のトラウマで対人恐怖症的であった時期もあるとのことで、本質的には非常に繊細なタイプです。

一方では、自身の経験を活かして、若い入院患者さんの良き相談相手やアドバイザーにもなっていました。

近年、ハイリーセンシティブパーソン(HSP)という心理的な気質が注目されていますが、彼もそのタイプに属すると考えられます。

HSPは病気や障害ではなく、5人に1人程度の割合で当てはまると言われている心理的な気質ですが、精神面が特に繊細な人は、そうでない方に比べて、社会の中で生きづらさを感じやすいうえ、アトピーがその生きづらさに追い討ちをかけるような状況となって、悪循環を生んでしまうことも少なくありません。

ふくらはぎ1

ふくらはぎ2

過去に当院に入院なさったアトピー患者さんの中には、発達障害の一種であるADHDやアスペルガーの傾向にある方もいらっしゃいましたが、アトピー症状の改善・安定には、患者さんが自分自身の内面への理解を深めることが役立ちます。

全国から患者さんを受け入れている当院の入院環境では、アトピー性皮膚炎という共通の課題を持った患者さん同士が出会います。幼少児からの様々な経験をお互い分かち合え、気づきを得ることは今後の人生に勇気を与えてくれると思います。
自己理解のプロセスを進めて、社会や他者とも健康的な関係性を構築していく事はアトピー治療に大きな意味を持つのです。

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