治療の現場から

       

退院から5年経過しても絶好調 入院期間2014年5月~10月:症例49

2020.01.01治療の現場から

30代男性

入院までの経緯

幼少期は肘内側と膝のみに症状があり、小学校低学年から中学校入学頃まではステロイドを使用。
その後は、社会人8年目までは症状は何もなく薬も使用していなかった。

入院の一年半前から肘内側や膝裏だけでなく、額や背中にわたって湿疹が生じるようになりステロイドを使用するようになった。

入院3ヶ月前からステロイドを使用していても耳から滲出液が出るようになり、入院での脱ステ治療が行える医療機関をインターネットで探し当院を受診。入院となった。

検査データの見方はこちらのページをご覧ください。

入院後の経過

全身性の滲出性変化を伴う皮膚炎で、最重症に分類される症例です。
全身に強い皮膚炎や落屑が生じており、耳、首、腕に滲出液が認められます。

患者さんご本人が結婚式を控えていたこともあり、焦りや不安を感じながらの治療となりましたが、治療と並行して根気よくバイオ入浴にも取り組みました。

検査データでは、皮膚炎の最も鋭敏な指標となるTARCは順調に改善したものの、3ヶ月経過時点でもPOEMや好酸球は高値であり、時間をかけての治療が必要となりましたが、入院から4ヶ月経過の退院時にはTARCは3桁台まで低下しました。

また、非常に高値であった好酸球も正常値一歩手前まで低下しただけでなく、POEMも日常生活に支障がないレベルまで低下しています。

退院後の経過

退院後は自宅でバイオ入浴を継続しながら定期に外来を受診していましたが、多忙な仕事や食習慣、生活環境の変化もあり、症状のコントロールに苦労する期間が一年半ほど続きました。

この間は、入院時のような重症状態となることはないもののなんとか皮膚炎と折り合いをつけての生活でしたが、2016年春の外来受診以降、症状は改善・安定傾向となり、2017年春頃までにほとんど皮膚炎が無い状態まで改善。

徐々にバイオ入浴を行う時間や頻度を減らしながら、体調に自信を持てた段階でバイオ入浴を自己判断で中止しました。

中止から約2年半が経過した2019年秋の受診ではTARC351をはじめ皮膚症状は概ね良好で、首や肘の内側に僅かな湿疹が認められる程度です。

変化が出るのに時間がかかるIgEも約300とアレルギー体質そのものが改善しており、自覚症状はチェックシートを行うまでもないほど。

食生活では、乳製品や油物を避けるなど気を付けていますが、大きく制限をすることなく過ごせています。
勤務先の大手企業でも昇進し、現在は海外出張などもある多忙な生活ですが、お子さんにも恵まれ公私ともに充実した日々を送っています。


この症例のように、一定期間のバイオ入浴継続後も症状が安定してバイオ入浴を中止できるのは、患者さんにとって理想的な改善経過です。

全ての患者さんが同じようにバイオ入浴なしで良好な状態を維持できるわけではありませんが、幼少期発病に関わらず急性期症状を示すTARC24000→360、好酸球26%→8.4%の著しい低下に加え、アレルギー体質そのものを示すIgE2300→300の低下は注目すべき点です。今後どこまで改善するかが楽しみです。

バイオ入浴を行っていても、様々な条件から良好なコントロール状態を維持するのには苦労する方もいらっしゃいますが、ほとんどの患者さんは自宅での継続により薬剤を使用することなく日常生活に支障のないレベルを維持できています。

皮膚症状が良好なためバイオ入浴を中止したところ皮膚炎が再発して、バイオ入浴を再開したり中には当院へ再入院しなさった方もいらっしゃいますので、患者さんには慎重に判断して頂く必要がありますが、この患者さんのような症例が、これから(現在)バイオ入浴に取り組む患者さんにとっての希望になることも間違いないことです。

このブログをご覧になった退院患者さんの中でも、自宅でのバイオ入浴を継続し良好な状態が維持できていたり、バイオ入浴中断後も完解状態を維持なさっている方は、ぜひ当院までご一報ください。

多くの方の改善例が、現在治療に取り組む方の希望になりますし、当院としてもなるべく多くの患者さんの退院後の様子を知ることが出来れば幸いです。

普通、体調が良いと医療機関は受診しないものですが、この患者さんのように家族旅行で高山を訪れた際などに、当院に立ち寄って頂ければと思います。

 

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