治療の現場から
ステロイド外用でコントロール不良だった内因性アトピーの青年 症例:93
2025.08.13治療の現場から
20代 男性 入院期間2025年3月~4月 46日間
入院までの経緯
小学生~中学生までは手の指がかさつく程度で、特に治療は受けていなかった。
高校2年から、首、背中、四肢の屈曲部に湿疹が生じた。
特に頭皮はガサガサしたりジュクついたりしており、皮膚科受診してステロイドや保湿剤の外用を開始。
効果はあったが症状の皮膚炎の消失には至らず、その後は良くなったり悪化したりを繰り返した。
入院の2ヶ月ほど前から悪化傾向が強まり、入院1ヶ月前からは、頭皮、顔の皮が剥けたり、目を開くのにも支障をきたしたりするようになった。
打開策を求めインターネットで知った当院を受診し、入院となった。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
頭皮や耳の周りに皮膚炎が強く生じていた大学生の青年で、体幹部や上腕にもまだらな赤みが伴う皮膚炎が生じていました。
入院前日までステロイド外用を使用していましたが、入院時の血液検査で皮膚炎の程度を示すTARCが5619pg/mlと、コントロール不良となっていることが判ります。
また、一般的なアトピー患者さんの場合に高値であることが多いIgE(アレルギー体質を反映)は基準値内であり、内因性のアトピー症状であると考えられました。
入院後は非ステロイド治療と並行してバイオ入浴も開始。
懸念されたステロイド中止後の急激な症状悪化(いわゆるリバウンド症状)は生じず、入院から10日でTARCが3246まで低下(改善)していました。
その後も皮膚症状の改善はスムーズで、入院から約4週間後の検査ではTARC802まで低下。大学の出席日数等の兼ね合いもあり、当院の入院治療としては比較的短い約1.5ヶ月間で退院となりました。
ドクターコラム
当院では、皮膚への病原菌の感染状況をアトピー患者さんが客観的に知ることができるように、皮膚炎患部の病原菌を培養する「スタンプ培地検査」を行っており、この患者さんでは左額と右上腕に実施しました。
シャーレ中の白く濁ったプツプツが黄色ブドウ球菌のコロニー(塊)ですが、入院時と退院時を比較すると歴然の違いがあります。
特に右上腕部は、入院時の検査ではびっしりと黄色ブドウ球菌が繁殖しましたが、退院直前には20数個のコロニーを確認する程度まで減少していました。
IgEが正常値の内因性アトピーで、抗原へのアレルギー反応を調べるRAST検査でも黄色ブドウ球菌への反応が低かった患者さんですが、皮膚に異常繁殖した病原菌(黄色ブドウ球菌等)から発する毒素が皮膚炎を生じさせていたという点においては、多数派を占める外因性アトピー患者さんと同じことが言えるのです。
※外因性・内因性の違いや、それぞれの特徴はこちらのページをご覧ください。