治療の現場から
最重症で入院した青年 カポジを乗り越えて劇的な改善 症例:95
2026.02.17治療の現場から
20代 男性 2025年6月~8月(70日間)
入院までの経緯
中学生の頃、手指に湿疹が生じて皮膚科を受診した。
乾癬との診断で薬を処方されたが、使用しても効果がみられない状態が高校生まで続いた。高校生卒業の春休みから目の周りや首にアトピー症状が出現。
一年間ほどステロイド外用を続けたが良くならず、入院の4年ほど前にステロイドを中止した。
一時的に改善した時期もあったが、症状が再発。漢方の煎じ薬や軟膏を使用したところ半年ほどは寛解状態で過ごすことができた。
入院の年の春、症状が再悪化して滲出液と痒みが強まり、睡眠もままならない状態となった。
治療を模索する中で当院を知り受診。入院となった。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
入院時の検査で皮膚炎の程度を反映するTARCが22293pg/ml(基準値450pg/ml)と、最重症状態で入院なさった患者さんで、他のアトピーの主要な検査項目も高値なことからも、強い皮膚炎が生じていたことがわかります。
入院前、自宅では痒みを抑えようと冷水のシャワーを浴びるなどしていたとのことです。
バイオ入浴を開始直後は、風呂上がりに滲出液が増えるといったことがありましたが、数日で軽減し、入院から1週間後にはほとんど滲出液は生じなくなりました。
入院から2週間が経過する頃には、一日中強い痒みがある状態からは脱し、入浴後や入眠前に痒みが増す程度に。
本人も改善傾向を実感している様子でした。
入院から約1ヶ月で実施した血液検査でもTARC3122と、入院時の約7分の1未満までに低下するなど改善を確認。
当院では退院の判断目安として、TARC2000以下を一つの指標としていますが、肝機能の検査結果から薬剤へのアレルギーが疑われたので検査を実施し、結果を精査したうえで退院の時期を相談することとしました。
その後も経過は順調かと思われましたが、入院1.5ヶ月時点で発熱と全身に細かな発疹が生じ、熱はピーク時には40℃まで上昇。風邪症状はみられず、全身には発赤疹が強まったことから、ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚炎(カポジ水痘様症、以下、カポジ)であったと考えられます。
発熱は5日目をピークに7日間ほど継続。発熱が治まるとともに発赤疹も勢いがなくなり、皮膚がいっきに痂皮(かひ)となってめくれ、その下からは非常にきれいな肌が現れました。
発熱5日目に行った採血では、TARCが上昇しているだけでなく、皮膚炎では細胞の破壊の増加に比例して上昇するLD/IFCCが大幅に上昇。
カポジが広がった皮膚の細胞破壊が進んでいる真っ最中だったと考えます。
まるで表面の皮一枚を脱ぎ捨てるかのように、広範囲の痂皮が剥がれ落ちると、その後、皮膚炎はさらに改善が進みました。
退院を前にした検査ではLD/IFCC 227U/L(基準値内)、TARC1696(入院時の約13分の1)、自覚症状のPOEM4点と、多くの面で大幅な改善が認められ、その変化は画像でも一目瞭然です。
入院中にカポジが生じた患者さん(バイオ入浴実践者)ではよくあるケースですが、ヘルペスウイルスに対抗するためにTh1タイプの免疫がより活性化して、皮膚炎を急激に改善させたのだと考えられます。
なお、当院の症例紹介ではいつも付ける注釈ですが、IgEは低下(改善)に時間を要することが多く、入院中はかえって上昇するということがよくあります。
これまでの経験で、IgEはバイオ入浴を半年くらい続けていると、徐々に低下してくる傾向にあります。





