治療の現場から

アトピー脱ステロイドの経過と注意点 久保Dr.からのアドバイス

2021.08.28治療の現場から

この記事では、中~高ランクのステロイドやプロトピック軟膏、免疫抑制剤(以下、ステロイド等と呼びます)を使用しているアトピー患者さんが、これらの薬を中断(脱ステロイド)した場合に生じることが多い離脱症状=リバウンドについて解説します。

脱ステ経過の症状は、ステロイド等を使用しても期待する効果が得られなくなった患者さんのステロイド使用中の症状にも一部共通しますので、この記事が、脱ステ希望者やステロイド等が効かなくなってしまったという方、現在脱ステの経過に悩んでいる方の参考になればと思います。

筆者 ナチュラルクリニック21院長 久保 賢介のプロフィール

院長

1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。

詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介

リバウンドはなぜ起きる?

ステロイド等は皮膚の免疫細胞の活動(炎症)を抑え込んでいます。
このとき、抑え込まれた免疫細胞は力を蓄えながら耐えているのですが、脱ステ状態となると抑制が解かれて勢いよく活動を開始します。

たっぷり力を蓄えていたので炎症は激烈になり、皮膚は破壊されてしまいます。

例えるならば、独裁支配からの開放を目指す市民革命戦争のようなもので、圧政が重く長いほど市民の怒りは爆発し、革命軍の銃弾やミサイル(炎症性物質=サイトカイン)が町を破壊してゆきます。

あなたを守ってくれるはずの免疫という軍隊は統制が取れておらず、混乱し、暴走しているのです。

当院では、リバウンドは本来のあなたに戻ってゆく変化だと考え、体の声に耳を傾けながら治療を行っていくことをお勧めしています。

続いて、リバウンドの際に見られる代表的な症状を解説します。

黒い文字が症状の解説、青い文字は当院の方針や経験則です。

発熱

アトピーが悪化しているときや、脱ステの経過で発熱を経験する患者さんは非常に多くいらっしゃいます。
それまで定期に供給されていた薬の成分が絶たれ、免疫細胞の炎症物質が多量に放出されると発熱が生じます。

発熱の程度は37℃台の微熱から39℃台の高熱まで様々ですが、体が元に戻ろうとする自然の仕組みです。

当院に入院した患者さんの中でも、入院から1ヶ月以上微熱が続く方が時折見られますが、熱は免疫が変化するきっかけともなり得るため解熱剤は使用しません。

バイオ入浴で免疫刺激をしている過程で生じる発熱は、回復と同時に皮膚症状も改善するケースをたびたび見かけます。

高い熱があるときは体内での炎症が強い事を示しているので、入浴は短時間にするよう助言しています。

悪寒・震え

発熱と一緒に生じることが多い症状ですが、震えは筋肉を痙攣させて体温を上げ免疫を高めようとする体の仕組みですから、状態が落ち着くと自然に出なくなります。

当院に受診・入院なさるアトピー患者さんでも、夏場でも震えが止まらないという方や、寒気があるために比較的状態の良い患者さん(悪寒がない患者さん)と同じ部屋にいることすら寒くてきつい。という方もいます。

繰り返しますが、皮膚炎の状態が落ち着くと悪寒や震えは治まります。

発熱や悪寒が強かった患者さんの症例

落屑(らくせつ)

中等症以上のアトピー患者さんであれば、皮膚表面からはがれた皮膚の粉や破片が床や身の回りに落ちる経験しているはずです。

人間の皮膚は、表皮の深い部分から表層に向かって新しい細胞を作り続け、日々入れ替わり続けています(これをターンオーバーと言います)。

病原菌(黄色ブドウ球菌や真菌類)が皮膚で大量増殖すると、それを外に排出するために皮膚のターンオーバーが加速します。

古い皮膚がどんどん捨てられているのが落屑ですが、室内に落屑を放置すると、これを餌にしてイエダニやカビが大量発生することがあり注意が必要です。

また、落屑が多く生じているとき、体内では皮膚を構成するたんぱく質などの栄養素がどんどん奪われていきますから適切な食事管理が必要になります。

患者さんの場合でも、自宅の床一面やベッドに落屑が落ちて、掃除機やコロコロでの掃除が毎日欠かせないという方は多く、入院中も症状が落ち着くまでは病室の落屑掃除が欠かせなくなります。

中には「家では必須なので」とコードレスのマイ掃除機を持参する方もいます。※共有の掃除機は院内に用意しています。

バイオ入浴をしていると浴水中に落屑が溜まるので、ネットですくうなどの手入れが必要になります。

落屑が多かった患者さんの症例

滲出液(しんしゅつえき)

掻き壊しや炎症によって表皮が破壊されると、琥珀がかった透明な体液が滲み出てきます。
これは主に血管から漏れ出した血漿(けっしょう)成分ですが、皮膚の病原菌と併さると不快な臭いが生じ、重症者では座った椅子が濡れてしまったり、ベッドで目覚めるとシーツや敷パッドまで濡れてしまったりすることもあります。

滲出液は黄色ブドウ菌の感染に伴うことが多いようですが、滲出液が多いとこれを栄養源として病原性細菌やカンジダが二次感染します。

当院では亜鉛華デンプンなどを使ってなるべく乾燥状態にすることで、不快感を緩和しながら治療します。

滲出液が多かった患者さんの症例

浮腫み(むくみ)

滲出液と同時に生じることも多い症状で、炎症と血液中のタンパクの低下で生じます。

当院を受診する患者さんの中には、足が赤く腫れて、靴はおろか靴下すら履けない状態になってしまっているという方にもしばしばいらっしゃいます。

入院の際に、足の甲に包帯を巻いてサンダル履き状態だった患者さんは、改善して退院する際には、歩ける喜びや歩けた時の感動を口になさいます。

歩くのもつらい状態で入院なさった患者さんの症例

ヘルペス・カポジ水痘様症

疲れやストレスが溜まると、免疫が落ちて口唇ヘルペス(単純ヘルペス感染)が生じるという人は多くいらっしゃいますが、脱ステ経過中で免疫が下がったアトピー患者さんの場合、湿疹部位に生じたヘルペスが急速に拡大して広範囲に及んでしまうことがあります。
この状態をカポジ水痘様症(以下、カポジ)と呼びます。※カポジには他にもタイプがあります。

カポジは、発熱を伴ったり細菌感染が合併し全身性にアトピー性皮膚炎が悪化したりするリスクが高まるため、症状が生じたら速やかに医師の治療を受けましょう。

クリニックと医師

カポジのような皮膚症状の急激な悪化をはじめ、このページで解説している様々な病状の変化に対して素早く適切な対応ができることは、重症アトピーを入院で治療する大きなメリットです。

カポジを経験した患者さんの症例

不眠

上記のような症状があるときに、ゆっくり落ち着いて眠れるという人はほとんどいないはずです。
痒みで眠れないとき、多くのアトピー患者さんは寝ているとき以上に体を掻いて、再生しかかった皮膚を掻き壊してしまいます。
また、寝たいのに眠れないというストレスや一人の夜に訪れる不安感は回復の妨げにもなります。

重症のアトピー患者さんが眠れないのはある意味では当然のことですが、人間の体は睡眠中に再生される仕組みになっていますから、治療も充分な睡眠が不可欠です。

当院では、入院治療中、不眠傾向の患者さんには、導入剤等の力を借りてでも睡眠をしっかりとって体の再生を促すよう勧めます。

睡眠不足では退院後の生活をどのようなものにしていくかを、冷静に考えることもできません。
導入剤に拒否感を持つ患者さんもたびたびいらっしゃいますが、皮膚炎が改善し、心身が整ってくれば薬は必要なくなっていきます。

不眠にくるしんでいた患者さんの症例

強い不安=抑うつ的な心理状態

脱ステロイドのリバウンドを含め、アトピーの重症状態が長く続くと、抑うつ的な心理状態となってメンタルケアが必要な精神状態に陥ってしまう方は少なくありません。

特に、脱ステの経過や重症者では多くの方が次のような「不安」に直面します。

  • これ以上悪くなることがあるのか
  • 悪化状態がいつまで続くのか
  • 日常生活や仕事はどうなるのか
  • リバウンド状態が落ち着いたとして、自分の皮膚はどこまで良くなるのか

先の見えない不安感から、「脱ステ 経過」などとインターネットやSNSで検索し、このページに辿り着いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

当院では、希望する入院患者さんには心理カウンセリングを提供できる体制をとり、入院中の不安解消や退院後の心のセルフケアに役立てています。

バイオ入浴や食事の管理などでコントロールできることが判れば、徐々に不安はなくなっていきます。

これから脱ステする人・脱ステして苦しんでいる人へ

ここまでも申し上げたように、ステロイド等を急にやめると症状の激しい悪化が伴うことが多いため、自己流の脱ステは推奨できるものではありません。

当院に入院なさる重度アトピー患者さんの中にも、「インターネット・SNS等の情報を頼りに自己流で脱ステをしたら日常生活すら困難になり、困り果てて入院するに至った」という方や、上記のような「脱ステ症状が長く続いて、社会生活が送れず引きこもり状態になっていた」という方が多くいらっしゃいます。

久保院長

また、脱ステに成功したらアトピーがきれいさっぱり治るものではなく、多くの場合はその人が体質として有しているアトピーの皮膚状態に戻るだけですから、脱ステ後も治療やケアは続くのだと考えておくべきです。

今後脱ステロイドをお考えの方には、医師の管理のもとで、その後の生活も見据えた脱ステロイドを強くお勧めします。

そして、現在脱ステ後の症状で苦しんでいる方は、当院での入院治療やバイオ入浴の実践を検討してみて下さい。

念願の脱ステに成功した患者さんの症例(一部抜粋)

当院の非ステロイド入院治療とバイオ入浴

当院では、15年以上にわたり非ステロイドでのアトピー入院治療を希望する患者さんを受け入れてきました。

その中には、上記のような脱ステロイドの激しいリバウンドで苦しんでいた方やステロイド等が効かなくなってしまったという方だけでなく、今使っているステロイドをやめたい(脱ステしたい)という患者さんも珍しくありませんが、多くの患者さんが2~3ヶ月程度の入院期間で症状を改善させて退院なさっています。
※最重症者など入院が4ヶ月を超える期間となる方もいらっしゃいます。

その中で実感しているのは、患者さんの脱ステ過程(主にリバウンドと呼ばれる経過)と自宅に帰ってからの生活をバイオ入浴が強くサポートしているということです。

バイオ入浴の浴水と循環装置

バイオ入浴とは、当院が開発提唱している入浴法(アメリカでの特許取得済み)で、入院中の患者さんは治療と並行して、当院の設備や併設のレンタル浴室でこの入浴法を実践なさっていますが、入院前の診察で「入院後、脱ステをするとしばらくは強い反応が出ることを覚悟して下さいね」とお伝えした患者さんが、私(院長 久保)の見立てよりもかなり軽いリバウンド反応だけで、改善・安定傾向となることもたびたび起こります。
※見立て通りの反応が出る方も多いので、脱ステのリバウンドを軽く考えてはいけません。

説明をする医師

また、長年のステロイド治療でステロイドの強度を最強クラスまで上げても良好なコントロールが得られなくなってしまい、別の方法論を探して当院に辿り着いたという最重症レベルの患者さんが、数ヶ月の入院後、ステロイドなしで日常生活を送っていらっしゃる様子を数多く見ると、患者さんが行っているバイオ入浴が免疫改善や症状のコントロールに極めて有用であることが判ります。

バイオ入浴を解説した記事

バイオ入浴の免疫賦活(ふかつ)作用が、免疫抑制の状態からの回復をサポートし、アトピー症状のコントロールを実現しているのだと考えられます。

自然界のバクテリアが人体の免疫を整えたり発達させたりする働きは今に始まったことではなく、我々の先祖が代々経験して受け継いできた、太古からの叡智です。

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