治療の現場から

サイトカインストームを乗り越えステロイドフリー達成 症例:64

2021.10.15治療の現場から

30代  男性 入院期間2020年3月~9月

ステロイド外用+内服+プロトピックでも不調の最重症患者が、入院とステロイド併用治療の結果、ノンステロイドでのコントロールに成功した症例です。

背中ビフォーアフター

症例写真は記事の後半に複数掲載しています。

入院前・入院中・退院後の数値変化

TARC変化グラフ#64

入院までの経緯

幼少期に発症 当初は軽症だった

幼少期よりアトピーであったが、皮膚炎は小学生の頃はひじ内側やひざ裏に生じる程度。
中学、高校時代は皮膚科通院しながらも症状は落ち着いていた。

社会人になると軽い症状が出るようになり、そのときどきに近医に受診しながらステロイドを使用してコントロールしていた。

ステロイド外用+内服+プロトピックの使用

入院の3年くらい前にはかかりつけの皮膚科を変更しステロイド外用/内服、プロトピックを使用していたが、入院の1年ほど前から悪化傾向となり、入院1ヶ月程前からは過去にないほど症状が悪化したため、当院を受診。
後日入院となった。

知人が当院の元入院患者で、退院後、何年も体調良く過ごしていたことも受診・入院の動機となっていた。

入院後の経過

ステロイド・プロトピック多用でもコントロールできず入院

初めて当院を受診した時点で、すでにステロイド外用/内服・プロトピックを使用しても症状のコントロールが得られなくなっていた重症のアトピー性皮膚炎患者さんですが、過去何年もプロトピックを保湿クリームのように使用していたとのことでした。

色素沈着・痒疹も生じている

ステロイド・プロトピックを中断するとリバウンドが生じる可能性が高いため、入院の2日前までは使用を続けていましたが、入院時の記録写真では首から下には色素沈着した痒疹が多数生じていて、手の甲にも痒疹(ようしん:1㎝弱の硬い患部が点々と隆起するような皮膚炎で、強い痒みを伴う)やゴワつきが確認できます。
また、頭皮の症状がもっとも強く、落屑・滲出液が生じていました。

ステロイドを中止 リバウンドが生じた

入院後の脱ステロイド状態になったことによるリバウンド反応は激しく、落屑、滲出液の範囲も全身に拡がって、痒みや痛みで眠れない日が続きました。
入院から1ヶ月を経過しても状態は改善傾向とならず、動くことにも苦痛を伴う状態。食欲もわかず、食べられない日もありました。

ステロイド内服の併用に転換し皮膚炎は軽減

あまりに強いリバウンド症状で、前向きに治療に取り組める精神状態ではなくなったこともあり、ご本人と相談の結果、一時的にステロイド内服を使用し、症状を落ち着けながらバイオ入浴による免疫変化を待ってステロイドを段階的に減らす方法をとることとしました。

ご本人は脱ステ状態に1ヶ月間耐えてきたことが振り出しに戻ってしまったように思えて焦りを感じている様子でしたが、ステロイド内服治療(セレスタミン1日6錠)を開始して数日が経過すると滲出液は止まり、皮膚炎の程度を反映するTARCの値は内服開始直前の約37,000から約3,000まで下落しました。
※このタイミングでの検査数値が表にないのは、定期外で臨時に検査をしたためです。

ステロイド内服を減量

発赤や乾燥が主体の中等症アトピーの皮膚状態となってからは、症状を維持しながら徐々にステロイド内服を減量し、バイオ入浴による変化を待ちました。

ステロイド内服開始から10日程でセレスタミン1日3錠に減量すると、検査結果は再上昇を見せ、TARCは5,000~20,000の間で上下を繰り返し、1ヶ月半後(入院から約3ヶ月)にはセレスタミンを1日2錠に減量。TARCは2万超でした。

前向きな姿勢

入院4ヶ月経過した時点でも、TARCの値が約25,000であることからも重症度が非常に高いことが判りますが、体力や気力は回復していて、前向きに療養に取り組みました。

入院から5ヶ月が経過するころになると免疫の変化が生じ、TARCが1万を下回るまで低下してきました。

ステロイドを使用しながら免疫変化に取り組む

最終的な入院期間は、当院としては最長レベルの約6ヶ月間に及びましたが、セレスタミン1日2錠併用してもTARC約2万という重症の急性炎症は5ヶ月近く続き、6ヶ月目に入ってようやく低下しはじめたことになります。

退院後も「ステロイドフリーでノーマルな皮膚」を目標として、当面は通院しながら薬剤治療と並行してバイオ入浴にも取り組み、免疫変化を促す方針を採用しました。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

入院中検査結果#64

退院後の経過

生活環境を見直しストレスから距離を置く

入院前は精神的なストレスを感じることも多い生活環境だったとのことでしたが、退院後はいったんその環境から離れて生活することを決意しました。

退院後1ヶ月でステロイド内服を中止するがリバウンドはナシ

傷病手当金を受けながら、セレスタミン1T程度の内服ステロイド治療と一人暮らしのアパートでのバイオ入浴での療養生活を開始すると症状は一段と改善し、退院から1ヶ月後の検査結果を見て内服ステロイドを中止しました。

入院時の脱ステでは非常に重いリバウンドが生じましたが、退院後の脱ステでは目立ったリバウンド反応は生じず、スムーズな脱ステが実現したのは、1年近くの時間をかけて、バイオ入浴での免疫改善に取り組んできた結果だと考えられます。

退院後1年 ステロイドフリーで検査結果も好調

この記事を書いている令和3年秋現在では、退院から1年が経過し暑くて発汗や紫外線が強まる夏も経験しましたが、TARC 733、LDH 234、好酸球2.5%と項目によっては基準値内です。
肌もほとんど正常な皮膚となり、右下肢に部分的な毛嚢炎が見られるのみ。
現在の好調な様子から他の項目に比べて遅れて変化するIgEも、今後徐々に改善していくと考えられます。

退院後検査結果#64

「ステロイドフリーでノーマルな皮膚」という目標を達成しました。

ドクターコラム

忍耐強さで手に入れた健康な皮膚

当院の入院治療としては、稀に見るほど長期にステロイドを使用した患者さんです。

入院中、発熱やリンパ節の腫れ(免疫変化のサイン)などを経験しながら、忍耐強く治療やバイオ入浴に取り組み、体内の免疫機構の変換を進めてきたことが実を結んで、退院後にステロイドフリーでの症状コントロールに成功しています。※こうして文章に書くと数行ですが、その間のご本人の痒さや苦しさ、苦労や不安は計り知れないものです。

サイトカインストームはアトピーでも

強い精神的ストレスの蓄積や長年の乱れた食生活による炎症性体質、食物アレルギーなどの悪化要因が加わると、アレルギー炎症が異常に強くなるいわゆるサイトカインストーム(免疫の暴走)状態になります。

全身の皮膚は赤くむくんで滲出液がにじむようになり、猛烈な痒みと悪寒だけでなく、動いたり歩くだけでも皮膚に亀裂が生じて痛みが襲います。このような状態ではCRPという炎症の値も上昇します。

もともと元気だった方でも、このような状態が改善しないまま1ヶ月間も続くと不眠となり食欲は低下、痛みでトイレに行くとことすら苦痛になります。
悪循環から脱するためには、改善の糸口を作る必要があります。

臨床経験から得た方法論

当院では長年このような患者さんの容態の変化に合わせ臨機応変に対応し、臨床経験を積み重ねるなかで、改善の糸口となる方法論を導きだしてきました。

粉末タイプの入浴剤で効果が得られない方には、液体タイプの入浴剤を勧める場合もありますし、新しい入浴添加剤も開発しています。院内処方する外用薬も有機的なものを何種類も準備してきました。

そして、ここに紹介した、「ステロイド内服を行いながらバイオ入浴を継続する方法」も、臨床経験から得た方法論のひとつです。

当院の入院はノンステロイド治療がメインです

ステロイドに頼ることなくアトピーをコントロールすることを目標・目的とする患者さんの入院を主に受け入れている当院では、通常は入院中にステロイドを使用することはありませんが、それでもバイオ入浴を行っているほとんどの患者さんが1ヶ月間程度で急性炎症を乗り越えます。

入院患者にステロイド内服を使うケース

しかし、急性炎症の改善が得られない場合には、ステロイド内服を短期間使用して急性期をしのぎながら免疫や体質の改善を待つという選択をする場合があります。その際に使用するのはステロイドの内服であり、外用は使用しません。免疫が暴走しているサイトカインストーム状態では、全身の免疫を抑える必要があるからです。
この患者さんのケースがまさにそういったケースです。

ステロイドを減らしステロイドフリーでの健康な肌を目指す

しかし、最終的な治療目標はステロイドに頼らず症状をコントロールすることですから、状態を見ながら適切にステロイド内服を減量し、最終段階としては内服を中止(終了)出来るよう、継続的な経過観察や処方変更が必要となります。

病態に合わせてアプローチを考える

ひとくちにアトピー性皮膚炎といっても患者さんによって病態は様々で、金属アレルギーが絡んでいる場合もあれば、接触皮膚炎が合併している場合もあります。
食事の質や量が絡んでいる場合もあります。重積した精神的ストレスが根底にあるかも知れません。

この症例のように、免疫変換に時間を必要とする患者さんもいらっしゃることから、患者さんの希望を尊重したうえで、ステロイド治療を行いながら、並行してバイオ入浴での免疫変換に取り組むというアプローチも今後増えていくかも知れません。

顔1#64

入院当日 ステロイドの効果が残っている状態
入院7日目 脱ステのリバウンドによって皮膚炎が悪化

顔2#64

入院1ヶ月経過 状態は更に悪化。赤みや滲出液も強度を増し精神的にも厳しい状態
入院2ヶ月経過 ステロイド併用治療に切り替え、症状には波があるものの上向きの状態

顔3#64

退院時 ステロイド併用で概ねコントロール状態となり、自宅療養に切り替え。
ステロイド治療を使いながら自宅でもバイオ入浴を開始した。

退院後6ケ月経過 ステロイド中止から5ケ月経過。自宅ではバイオ入浴を実践中。
体重はアップしたが自炊して食べ物には気を付けているノンステロイドでのコントロールに成功。

胸元1#64

胸元2#64

胸元3#64

腰1#64

腰3#64

腹部1#64

腹部2#64

腹部3#64

背中1#64

背中2#64

背中3#64

手の甲1#64手の甲2#64手の甲3#64

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