治療の現場から

強い痒みに悩まされた痒疹 脱ステロイドのリバウンドを乗り越えて改善 症例:56

2020.11.14治療の現場から

40代 男性 入院期間2020年7月~10月

脛1#56

脛2#56

入院までの経緯

乳幼児期から湿疹が生じて一時は重症化したこともあり、母からは大変だったと聴いて育ったが、幼かったため本人に記憶はなく、小中高校時代は皮膚に異常はなかった。

入院の3年前、40歳になった頃から防寒スパッツを着用した際に足に痒みが生じるようになった。

一年ほど経過したある日、スポーツクラブのサウナに入った後、急に全身に痒みが出たため近医皮膚科を受診し、抗アレルギー剤と外用ステロイドの処方を受けた。

ステロイドを塗布すると痒みは取れるものの、効果は数時間しか持続せず、プロトピックを試すが効果が感じられないばかりか痒みが増した。

ふくらはぎ1#56

ふくらはぎ2#56

入院の一年前に近医で受けた血液検査では、TARCは700台でステロイドなしでも生活は出来ていたが、次第に悪化してステロイドの使用量や強度が増加。

入院の少し前からは数日ステロイドを中止すると寒気が生じるようになっていた。

この間、自分に合った治療を求めて地元の皮膚科を何軒も受診したり、民間療法を試すなどしていたが、全く改善が得られず、最終的には免疫抑制剤(シクロスポリン)内服とベリーストロングのステロイド外用原液塗布を行っていたものの、強い全身性の痒みが持続して労務困難に陥っていた。

ネット検索で当院を知り受診。入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果#56

入院後の経過

IgEが正常値に近いにもかかわらず強いアレルギー性の皮膚炎が生じている患者さんで、肌の状態も、乾燥や落屑、滲出液といった典型的なⅠ型のアトピー症状ではなく、慢性の痒疹(ようしん)を主とした皮膚炎です。

遅延型(Ⅱ型)のアレルギー反応の影響が強いと考えられる痒疹は、1㎝弱の硬い患部が点々と隆起するような皮膚炎で、強い痒みを伴います。

足の甲1#56

足の甲2#56

この患者さんは、当院入院後のステロイド使わない治療を見越して、入院一週間前からはステロイドの使用を中止していたため、入院当日の時点ですでにリバウンド反応が生じ始めていて、寒気・悪寒がするという訴えもしばらくの間ありました。

入院から10日ほど経過したリバウンド期の症状写真も数枚掲載させて頂きますが、上半身を中心に皮膚の赤みが増し、炎症が悪化しているのが確認できるだけでなく、血液検査でも入院時に約3300だったTARCの値が11000を超えるなど、この時期が非常につらい状態であったことがうかがえます。

しかし、リバウンド期であっても手の甲に生じていた傷は癒えはじめており、入院から10日で普通肌に戻りつつあるのがわかります。

手の甲1#56

入院時

手の甲2#56

入院から10日経過

手の甲3#56

退院時

入院初期は、入院前から広範囲に生じている痒疹をえぐったような掻き壊し傷から滲出液がにじんでいましたが、入院から2週間を経過する頃には症状は改善傾向となり、次第にバイオ入浴の効果を実感するようになりました。

入院3ヶ月経過の退院時の写真では、胸周辺を中心に生じていた赤いプツプツとした湿疹だけでなく、脚や腕の痒疹も改善しているのがよくわかります。

また、強い痒みが生じる痒疹では、患者さんは何度も患部を掻き壊していることが多く、患部には色素沈着が生じますが、時系列で写真を比較すると、時間の経過とともに徐々に色素沈着が薄くなっていることが確認できます。

腹1#56

入院時

腹2#56

入院から10日経過(リバウンド期)

腹3#56

退院時

このケースでは数件の皮膚科を受診していますが、アトピーのガイドラインで示された既存の治療法では行き詰まってしまっています。

いつもお話しするように、アトピーの治療は、“アトピー性皮膚炎は免疫形成不全者に生じた病原微生物感染”だということを念頭に置いて進めるべきです。

ステロイドや免疫抑制剤は、使用方法を誤ると、黄色ブドウ球菌やマラセチア等の微生物感染を悪化させてしまいます。

アトピー性皮膚炎も、痒疹が形成されるまで症状が進むと、治療が一層困難になるというのが通念ですが、バイオ入浴では、このケースのように全身の多発性痒疹が消えていくことを何度も経験しています。

脱ステ悪化の発熱や滲出液も乗り越え痒疹(ようしん)も改善 症例:51

痒疹は、元々は病原性微生物の感染から身を守るために集まった、「免疫細胞の集まり」ですので、免疫が正常化すると必要性がなくなって消えていくのだと考えられます。

ドクターズコラム

学生時代は体育会系の部活に打ち込んでいたというこの患者さん。

非常に行動的な性格で、症状が改善するにしたがって、ジョギングなど活発に体力づくりに取り組んでいましたが、運動で汗を沢山かくと皮膚の痒みが増すことも多く、やりすぎないように注意を促しながらの治療となりました。

背中1#56

入院時

背中2#56

入院から10日経過(リバウンド期)

退院時

入院前は相当にハードな勤務体制で働いていたということで、過労が悪化要因の一つだというのが本人の分析です。

彼の症状悪化と入院を受け、会社側も、勤務体制や労務管理を見直す必要性を感じていらっしゃる様子だとのこと。

ご本人も、初めは退院後の職場復帰を心配していましたが、途中からは会社側の理解ある対応に安心して入院生活が送れたようでした。

それまでほとんどやらなかった料理(食事療法の継続)をはじめ、復職後も仕事と私生活のバランスを取って健康を維持していきたいと話していました。

調理実習#56

調理実習中のこの患者さん

アトピー患者さんに、皮膚炎が悪化した時期、生活面に起きていた変化などの心当たりをたずねると、多く聞かれるのは、仕事の多忙や職場・学校でのストレスという答えです。

過労はキラーストレスとして肉体と精神に悪影響を与え、時間外労働が多いと脳血管疾患やうつ病の発症リスクが上がることなどは社会的にも認知されていますが、アトピーの悪化も無縁ではありません。

アトピーは命に関わることは滅多にないものの、中等症になると就業や就学にも支障をきたし、重症化すると日常生活すら困難となるなど、社会的な生活には大きなハードルとなり得る疾患です。

デコルテ1#56

入院時

デコルテ2#56

入院から10日経過(リバウンド期)

デコルテ3#56

退院時

しかし、それほど大変な疾患であるということが一般にはあまり認知されていないため、当院への入院を会社に相談したけれど、上司や同僚に快く送り出してもらえず、入院を諦めざるを得ないと話す患者さんも度々いらっしゃいます。

2~3ヶ月間にわたる休職が職場に大きな負担をかけることは理解できますが、症状を改善させ、その方の能力が最大限に発揮できる体調を取り戻すことは、職場の利益にもつながるはずです。

アトピーで悩む人が職場内にいらっしゃる場合には、経営者や管理職の方には柔軟な対応をとって、入院治療にもなるべく積極的に送り出して頂きたいと願っています。

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