治療の現場から

救急受診するほどの滲出液 アトピーが原因の肝障害も改善 症例:52

2020.07.03治療の現場から

20代 男性 入院期間2020年3月~6月

首1#52

首2#52

入院までの経緯

乳児から発症するも特に治療はせず、学童期まで湿疹が生じていた。
中学3年、発汗をきっかけに全身性に悪化したが、半年ほど続けた民間療法で改善し、その後は少し症状が出ていたものの日常生活には支障なく過ごす。

23才で介護職に就いたころから手に症状が生じ、ステロイドを外用使用。しかし、症状は全身に拡大した。

1ヶ月間ほどステロイド治療を続け、その後は食事や水、入浴などに気を付けていたら半年程度で改善。
介護職は退職したが乾燥肌は続いた。

腕1#52

腕2#52

入院の約半年前から症状が再発し、徐々に全身に拡がった。入院の2週間ほど前から滲出液が出るようになり、近医皮膚科でステロイド処方を受け、入院前日まで使用。

入院1週間前には、発熱と滲出液が止まらず救急を受診。
ステロイド点滴や内服薬で症状は少し改善したが、非ステロイド治療と抜本的な改善を求めてネット検索し、当院への入院を決意した。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果表#52

入院後の経過

入院時、顔面や耳、首には滲出液を伴う皮膚炎が生じており、腕や脚などにも強い皮膚炎がみられた重症アトピー患者さんです。

上半身や腕は皮膚炎で赤みが強く生じており、色素沈着も認められます。アトピー性皮膚炎が原因と思われる軽い肝障害も併発していました。

ひび割れやヒキツレのために体を動かすのも困難で、院内を歩行するにも痛みが伴う状態での入院。

入院直後は動くのがつらく、ベッドで体をふせたままじっとしていることもありましたが、改善は比較的順調で、入院1ヶ月で皮膚炎の程度を示すTARCは4分の1以下に、好酸球も確実に低下しています。

1ヶ月を経過してからは顔の皮膚炎の改善も明確で、普段入院患者さんとあまり顔を合わせない職員は、入院時とは別人のように改善した彼に驚いていました。

入院2ヶ月の検査ではTARCは基準値目前に、LDHは基準値内まで低下しました。

その後も順調に改善は進み、重症者の入院期間の目安である3ヶ月を待たずに退院。
さらなる免疫改善のために自宅でもバイオ入浴を開始しています。

 

背中1#52 背中2#52

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院長コラム

入院直前に発熱して近医を受診した際、血液検査で肝機能検査の値が高かったため、家族はアトピー以外の病気を心配していました。

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、免疫の暴走であるサイトカインストーム(高サイトカイン血症)という言葉が知られるようになりましたが、重症のアトピー性皮膚炎でも、新型コロナほど重篤ではないにせよ、サイトカインストームが生じていて、当院の研究でも血液中の数多くのサイトカインが異常高値になっていることが判っています。※IL-13. IL-2. IL-7. IL-17.IL-10.IL-6.IL-8. IFN- ɤ.TNF- α.MCP-1等

サイトカインストームは、この患者さんのように肝障害を誘発する場合や、腎炎を誘発し蛋白尿が生じる事があります。

また、最近の研究ではサイトカインの高値が脊髄や脳に影響し、抑うつ等の原因になっているという報告もあります。Farzanfar D, et al .Skin Pharmacol Physiol 2018;31:246–251 他

足の甲1#52

足の甲2#52

限定解除要件

しかし、バイオ入浴で皮膚を昔の自然環境に戻してあげると、正常な免疫を取り戻すのです。彼もアトピー性皮膚炎が落ち着くと、肝機能も正常になりました。

人の免疫は4億年以上の進化の過程で数多くの環境バクテリアに接しながら育成されてきました。
人類が「人類だけで生きてきた」と考えるのは浅はかな錯覚です。
免疫異常を是正するには、免疫の育ての親である環境バクテリアに接する事が何よりも大切なのです。

当院に入院する患者さんの中には、入院時は悪寒・寒気で震えが止まらない方や、発熱でもうろうとしていたために入院当初の記憶が曖昧だという方もいらっしゃいます。

当院の強みは、このような重症のアトピー患者さんを多数経験しており、ステロイドからの離脱反応やヘルペスやカポジなどウイルス性の皮膚炎などへの対応に熟達していることです。

もちろん、患者さんの容態や体質は千差万別ですが、蓄積した経験則に基づいた治療・ケアが可能なのは、アトピー専門の入院施設を要する当院の大きな特徴です。

久保院長

さて、この患者さんは、現在は看護師を志して学校に通っている物腰やわらかな優しい青年です。

院長の私は、高校生の頃に喘息治療のための入院や、誤診によって結核療養所での生活を経験し、「病や病人という立場」を知識ではなく体験として学びました。

この経験が医療者としての私のベースとなっているだけでなく、「人生はやりたいことを思い切り謳歌(おうか)するもの」という人生観を形成し、一般的には無謀とも言われた有床診療所の新規開設や、バイオ入浴という型破りなメソッドを開発するに至っています。

実は病から学べる事は非常に多いのです。彼は私が患者さんと行っている朝の瞑想タイムにも参加していました。自身の心の動きを捉え学び、自身を深く知る事も大切です。

アトピー性皮膚炎という困難や治療生活、そして人を自然の一部ととらえ自然界の摂理に沿う自然療法との出逢いが将来の糧となり、充実した人生を送ることに役立てばうれしく思います。

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