治療の現場から

       

靴が履けず歩行困難だった最重症もウォーキングが楽しめるまでに! 入院期間2019年6月~9月:症例47

2019.11.22治療の現場から

40代女性

入院までの経緯

生後3ヶ月頃にアトピー性皮膚炎と診断され、ステロイド治療を開始。
学童期までは肘やひざ等限られた部分のみだったが、中学からは顔、首を中心に腹部にも拡大した。

高校2年生でステロイドでのコントロールも不良となり、一年間程度、小麦や米の除去食を実施して徐々に回復。
その後も症状は継続していたが、ステロイドを使用しながら大きな悪化はなく過ごしていた。

25歳頃に化粧品メーカーの入浴剤を使用したところ、乾燥が減りステロイド使用量も減らすことができた。
32歳で結婚し、二人の子を出産。この間、約6年程度はほぼ症状なく保湿程度で過ごせた。

41歳で喘息を発症し、治療のためにステロイド吸入や抗アレルギー剤服用を行うようになったが、この時期から徐々に皮膚症状が悪化傾向となって全身に広がった。

当院入院の約半年前まで6年間は、顔にはプロトピック、体にベリーストロングタイプのステロイドを塗って過ごしていた。

しかし、次第にステロイド外用の効果が低下し皮膚の菲薄化で保湿剤にも刺激を感じるようになり、ステロイドの長期依存に不安を感じて、当院入院5ヶ月前から脱ステ・脱保湿を実施に加え紫外線治療を受けていた。

一時的には安定したが、入院の約2ヶ月前に蜂窩織炎(ほうかしきえん)となり1週間入院。
その後ヘルペスが全身に生じ、アトピーも急激に悪化した。

抗生剤や保湿剤も効果は得られず、全身の症状で日常生活が困難な状態となり、インターネットで知った当院を受診、入院となった。

検査データの見方はこちらのページをご覧ください。

入院後の経過

全身性の最重症アトピー性皮膚炎患者さんの症例です。
入院時は全身に傷やかさつき、赤みがあり落屑も多く見られました。

特に顔面や四肢の炎症が激しく、滲出液の固まりや皮膚のひび割れによって腕や指の曲げ伸ばしでも痛みが生じていました。

下肢は全体的に浮腫んで靴が履けず、サンダルで長距離を移動しての来院

 

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入院中は一日4時間程度のバイオ入浴を行いながら非ステロイド治療を実施し、着実に症状や検査データが改善していきました。

改善しているのはご本人の生活を見ていても明らかで、入院当初は下肢の腫れや痛みから非常にゆっくりと院内を歩行していたのが、改善に従い体力づくりのためにエアロバイクを漕いだり、入院患者さん向けウォーキングセミナーなどの院内行事にも積極的に参加するようになっていかれました。

小中学生のお子さん二人をご主人に任せての長期入院でしたが、入院から1ヶ月が経過した頃、面会に来たお子さんが「お母さんが普通に歩いている!」と驚いていました。

検査データの面でも、入院時27.0%であった好酸球が、入院から2ヶ月経過時点で正常値内の6.0%まで低下したことをはじめ、その他の項目も順調な改善が得られています。最重症状態から3ヶ月間の入院でしたが、TARCを3桁まで低下させて退院なさいました。

なお、IgEには明らかな改善は見られませんが、IgEはその特性上、代謝が緩やかなため直近の皮膚炎は反映せず、6ヶ月程度の長期で変化するため徐々に低下するのが一般的です。

ご本人は、入院中は他の患者さんとの交流や院内の行事などに積極的に取り組むことを心がけていらっしゃり、実際に非常に積極的・前向きな姿勢で治療に取り組んでいました。

アトピー性皮膚炎の治療には、これまでの生活や食事の習慣、考え方のくせやこだわりなどを見つめたり、手放すことが重要になることが少なくありません。

この患者さんのように、入院生活を積極的・前向きに送ることが、精神面を含めてより良い変化への近道です。

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