治療の現場から

重症アトピーがノンステロイド入院治療で改善 退院後も好調な女性 症例:71

2022.06.17治療の現場から

20代 女性 入院期間 入院期間2018年1月~3月

退院後約4年経過の受診でもアトピー性皮膚炎が改善・安定していて、アレルギー体質も軽減している症例です。

入院までの経緯

小学1~2年生頃は喘息があったが3年生には治まった。
同時期から、関節の内側や背中にアトピー性皮膚炎が生じるようになったが、乾燥肌程度の軽症であった。

15歳、目の下に湿疹が生じイソジンとプロペトを混ぜた軟膏を使用したが改善なく、プロトピックの使用を開始。
その後は、症状に波はあるものの概ねコントロールできていた。

22歳で顔と全身に症状が出るようになり、ステロイドを使用するようになる。
2~3日塗って1日休むというペースでコントロール出来ていたが、26歳(入院の約2年前)で症状が悪化し、連日使用するようになった。

入院の1年前からステロイドの減量を試みたところ、9ヶ月間は概ねコントロール状態を維持できていたが、その後完全な脱ステに踏み切ると、3週間ほど経過した頃から発熱と全身の赤み、リンパ節の腫れなどが生じて局所的に滲出液(しんしゅつえき)が生じるようになった
体調不良のため休職し、ステロイドを使用しない治療を希望して当院を受診。後日入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

入院後の経過

入院前受診の検査で皮膚炎の程度を示すTARCが8477、急性期のアレルギー炎症や長期的なアレルギー体質を反映する好酸球が35%、細胞の破壊の増加に比例して上昇するLDHが535という重症状態で入院した患者さんで、特に好酸球が高いのが特徴です。

初診から11日後に入院となりましたが、顔や後頭部、肘、膝裏などに赤みや傷があり、特に肩から背中にかけての痒みが強いとのこと。入院時の検査でもTARC5432、好酸球42.0、LDH468と高い値でした。

もともとアレルギー反応を生じる食品が多く、本人からの申告をもとに除去食を提供しましたが、食べ物との因果関係が不明確な反応や、本人もこれまで意識してこなかった食品の中にも反応が疑われるものがあったため、新たな食品項目についてもアレルギー検査を行ったり日々の体調変化を見たりしながら、検討・調整する必要がありました。

また、当院受診前に他院で処方されていた漢方薬について検査すると、漢方薬2種類に対してもアレルギーを起こしており、かえって皮膚炎を悪化させていたことがわかりました。

入院中はバイオ入浴にも取り組みながら治療を進めましたが、入院後2週間でTARCは2000を下回り、1ヶ月半で当院が退院判断の基準の一つとしているTARC1000前後を達成。LDHも基準値内となりました。

入院から約2ケ月半経過の退院時にも好酸球は16.1%と高い値ですが、治療開始時から右肩下がりで改善しており、体質的に好酸球がゆっくり低下するタイプなのだと考えられます。

⇒入院治療前、好酸球は40%前後の高値でしたが、この値はリンパ球も含めたすべての白血球の40%がアレルギー細胞であることを示していてます。これは骨髄で作られる顆粒球の約70%にのぼります。

入院当初と退院2週間前で皮膚症状の画像を比較すると、全体に症状は軽減しているものの膝裏などに局所的な症状が持続しています。
その後も改善は進みましたが、それでも万全とまではいかない状態での退院。自宅でバイオ入浴を開始しました。

退院後の経過

自宅でバイオ入浴を行いながら仕事にも徐々に復帰し、フルタイム勤務も可能になりました。

退院後2年間ほどバイオ入浴を継続していましたが、その後、機器のメンテナンスなどの問題から中止しました。
アトピー性皮膚炎の症状はその後も概ねコントロール出来ており、疲れがたまると首や関節の内側が痒くなる程度だとのことです。

退院後4年が経過した2022年春、急に蕁麻疹が出たということで久しぶりに受診し、血液検査と皮膚症状の記録を行いましたが、ごく一部の部位を除いて正常肌です。

ところどころにある掻き傷やPOEMの5点は蕁麻疹も影響しています。

血液検査でも、入院中から改善が順調だったTARC、LDHが基準値内なだけでなく、反応がゆるやかだった好酸球、長期的なアレルギー体質を反映し下落までに時間を要するIgEも低下していて、アトピー性皮膚炎が良好にコントロールされていることがうかがえます。

ドクターコラム

退院後、4年間以上にわたって良好な状態が維持できているアトピー患者さんの症例です。

当院は日本全国から重症アトピー患者さんの入院を受け入れていますが、退院後に症状が安定している遠方の患者さんが、わざわざ飛騨高山まで受診に訪れることはあまりありません。

ご本人にとってみれば健康なのだから受診する理由はありませんし、当院の予約も混み合っていますから、当然と言えば当然です。※通院中の患者さんにはご不便をおかけしています。

しかし、その反面、この患者さんのように退院後も長期間良好な状態が維持できている患者さんの状態を把握して、症例としてご紹介できることは、これから当院で入院治療に取り組む患者さんの大きな希望になります。

この記事をご覧の方の中にも、当院を退院なさった患者さんがいらっしゃるかも知れませんが、もししばらく当院を受診なさっていないようでしたら、ぜひ最近の様子をお聞かせ下さい。

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